ウォークラフト その2

先に断っておく。本稿では未だ小説版ウォークラフトの内容には触れない。

毎年のロードレース観戦を楽しみにしているのだが、今年はツール・ド・フランスの開催が怪しくなっている。ジロ・ディタリーは開催延期が決まり、ブエルタ・エスパーニャは期間短縮での開催が早々に決定された。eスポーツにも影響が出ており、通常は会場で開催される試合がオンライン上で行われたりしている。(後に分かったがツールは8月末からの開催になった。)

この4月からゴールデンウィークにかけて、幾つかのゲームの大会がオンラインで開催された。僕が興味のあるタイトルだけ挙げると、”League of Legends (LoL)”の各国内大会, “Hearth Stone”の日本大会, そして”World of Warcraft (WoW)” の “Mythic Dungeon International (MDI) “。最後のものは当然として、前二つの成り立ちにもWarcraftが大きくかかわる。

元来WarcraftシリーズはRTS (Real Time Strategy) として展開されており、一対一の対戦者同士がそれぞれの陣営のユニットを操作し、資源を回収して陣地を拡張、建築物を建て、更には一般ユニットよりも強力な固有「チャンピオン」ユニットを操作するという非常に複雑で操作量を要するゲームであった。これを単純化し、チャンピオンのみの操作で遊べるようにしたMODを有志が作成したのが「MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)」というジャンルの始まりであるらしい。そして今現在、このジャンルでもっともプレイ人口が多いとされるのがLoLであり、5対5のチーム戦となっている。一試合ごとのプレイ時間があまりに長いので僕自身はやっておらず、チャンピオンのスキルも分からないのだがプロの試合は面白い。サッカーを観るようなものだ。日本リーグと韓国リーグの試合が日本語実況付きで放送される。且つて最強リーグであった韓国の試合は未経験者ながらレベルが高いと感じる。

Hearthstone プレイ画面

このWarcraftシリーズをMMORPGとして受け継いだのがWoWで、現在15年目の長寿ゲームである。具体的にいつ頃だったか忘れたが、このゲーム世界内の炉端で遊ぶためのカードゲームとして登場したのが”Hearth Stone”である。WoW内でもプレイできる。大枠はアナログのカードゲームの大御所であるMTGと同様だと思うが、このゲーム性は多分アナログでは再現できない。それぞれのカードはWoWゲーム内の主要人物やモンスター、スキルと魔法である。カードを集めるのがあまりに面倒で僕はプレイしておらず、カードごとの効果なども全く分からないのだが、実況付きで観戦する分にはとても面白い。カードゲームなので運に左右される確率が高いが、強い人(これはすなわち、思考が柔軟で頭の回転が速い人、劣勢でも細い勝ち筋を逃さない人だと思う) はしっかりと勝つ。因みに日本ではこのゲームのコピー作品の方が人気であるらしい。

そしてMDI。WoWでは拡張毎に10を超える数の”Instance Dungeon”というものが追加される。これは5人一グループで攻略するコンテンツで、他エリアから隔離された固有ゾーンとして各グループごとに生成されるため、”Instance”という単語が付く。その大半はレベルを上げる際に訪れることもできる程度の難易度 (これをNormal level という) だが、レベルキャップして後も遊べるように高難度バージョン (Heroic level, Mythic level)が選択できる。そして一つ前の拡張から、この Mythic level に上限が無くなった。Mythic +1, +2, +3 と数字を上げるに連れ難易度が上昇する。

“Mythic Dungeon International (MDI) “では、一般プレイヤーでは制限時間内どころか走りきることすら困難なレベルである+19 や+20の難易度で、対戦グループ間のクリア時間競争として展開される。これはロードバイク競技に似ている。単純な時間競争ではあるが、対戦ごとにダンジョンの付加効果の組み合わせが変わったり、対戦相手のベストタイムを参照して無理をする必要があったりと心理的なプレッシャーもある。そのレベルの難易度では一瞬のミスやチームワークの不備が死に繋がるので、正に綱渡りの様である。それを、まるで魔法でも見せられているかのようなやり方で、極めて短い時間内にクリアしていく。勿論僕自身は遥かに低い難易度しか知らない。残念なことに此れの実況に日本語版はない。

WoWにはもう二つ、ゲーム大会が有る。その一つは”Arena”と呼ばれる、3対3の対人戦で、こちらにはあまり興味がない。もう一つは厳密には大会ではないが、各団体 (guildと呼ばれる) によるコンテンツのクリア競争であり、期間限定である。WoWではだいたい半年に一度くらいの頻度で大型パッチが当たり、大規模な”Instance”ゾーンが導入される。これは5人で構成される”group”を複数重ね(“raid”)ないとクリアできない難易度なので、一般に “raid instance”と呼ばれ、通常の “instance dungeon” とは比較にならない規模とボス数で構成される。これの最高難易度、”Mythic difficulty” の世界初クリアを目指して、パッチ直後から世界中の有力ギルドが攻略に集中し、その途中経過はウェブページで逐一確認できる。そして最新の拡張あたりから幾つかの有力ギルドがリアルタイムの攻略風景を動画配信サイトで公開するようになり、これに実況が付いて皆で議論しながら見守るようになった。有力ギルドにはスポンサーが付き、メンバー全員か少なくとも主要メンバーは一か所に集まってプレイしているようだ。

最新のレイドインスタンス

この攻略競争はアメリカとヨーロッパの戦いでもある。WoWの最初期にはアメリカのギルドが世界初を取り続けたが、じきに、何時からかは覚えていないがかなり早い時期から、ヨーロッパのギルドが世界初とトップランキングをほぼ独占するようになった。僕の印象に強く残っているのは、とあるフィンランドのギルドである。新人採用項目を見てみると、例えば使うクラスや役割のパフォーマンスをテストする、といった当たり前の条件に加えて、フィンランド語が話せること、という項目が有った。これが満たせる人材はフィンランド人以外にそうは居ないだろう。この頃からフィンランド語が頭から離れなかった。このフィンランドギルドは2,3年の間、圧倒的に世界初を取り続け、そして人材難を理由に解散した。その後は英語を共通語とするヨーロッパギルドが世界初を独占したが、幾つかのアメリカギルドもトップに競り合うようになり、遂に最後の raid instance でアメリカギルドが世界初を取り返した。この世界初競争の歴史は各ギルドの工夫と、一部のチーティングの歴史でもあり、いずれ本として出版されるかもしれない。

WoWがこれ程長く続くとは、開発会社のBlizzardも当初は考えていなかった。10年以上前に”Titan”というプロジェクト名で全く新しいMMORPGを作成中と公表されており、WoW2とも、同社の人気RTS “Star Craft” のMMORPG化とも噂されたが、MMORPGはその当時で既に「時代に合わなくなりつつある」ゲームスタイルであるとして中断された。当時WoWは二つ目の拡張が導入されており、プレイヤー人口的に最盛期であった。僕は話の展開的にWoWはそこで終わると考えていたのだが、そこから後が実に長い。ドラゴンボールがピッコロ編でお終いと思ったら、「もうちょっとだけ」続いたようなものだ。ストーリー自体もBlizzardはもともとそこまで考えておらず、DB同様に付け足しによる付け足しである。それでは小説版 (映画版) ウォークラフトがどの辺を取り扱っているかと言えば、WoWで展開される時代よりもう一世代 (?) 前である。1994年に発売され、その後のRTSに多大な影響を与えた (と言われる)このシリーズの元祖 “Warcraft: Orc and Humans” に基づく。

左の男前がオーク種族

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