Uromastyx

本書は此処で僕が紹介する本の中では最もマニアックな一冊である。マニアックとは言っても Uromastyx (トゲオアガマ) の一般飼育者に向けたがガイドブックなので英語は平明で分かりやすい。Amazonのレビューの方にはTOEIC高得点者が、知らない英単語が頻出するとコメントしていたが、そもそも本書はTOEICが対象とする分野とは異なる。一般的な (つまりビジネス英語をそれほど知らない) 読者にとってはビジネス書などよりも余程読み易いと思う。ボリュームも大して無い。

上にも少し書いたが Uromastyx は日本語ではトゲオアガマと呼ばれる。中東やアフリカ北部の砂漠地帯に生息する、実に愛らしいトカゲの一属で、トゲトゲの太い尻尾とボテッとした平たい腹、寸詰まりの頭部を持ち、地を這って活動する。大きさは小さい種(Uromastyx thomasi)は30cm未満、大型種(Uromastyx aegyptia)で最大75cmまで記録が有る。寿命はだいたい20年未満、大型種なら40年近く生きるそうだ。ほぼ植物食性である。昼行性で、日中は太陽の照り付ける気温50度や60度に昇る様な場所で日光浴(バスキング)し、十分温まると日陰で休む、を繰り返す。危険(猛禽類などの捕食者)が迫れば自身が掘った穴や岩場の隙間などに潜り込み、トゲトゲの尻尾で蓋をする。同時に体を膨らませて容易に引っこ抜かれないように抵抗する。実に愛らしい。このトカゲ、僕が子供の頃にも図鑑か何かで見てはいたが、気にかけてはいなかった。爬虫類飼育業界でも比較的新しい種類だそうだ。こいつが猛烈に気になったのは、You Tubeの”Clint’s Reptiles”というチャンネルで紹介されていたのを観てからである。

この”Clint’s Reptiles”では、多分何らかの爬虫類学の教授であろう出演者がペットとして飼育可能な様々な爬虫類を紹介している。各種個別の紹介とは別に、例えば「初心者に最も適した爬虫類5種」,「私が最も好きな爬虫類5種」,「安易に飼育したら後悔する爬虫類」などのテーマがとても面白い。この中でトゲオアガマは飼育しやすい (他の入門種ほど入手しやすいわけではない) トカゲの一属として、ペットトカゲの代表種であるフトアゴヒゲトカゲと並べて紹介されている。両種とも体調管理が比較的簡単で、動きが素早くなく人馴れするのでハンドリングしやすい。どちらを取るかは各人の好みの方を、という結論であった。因みに爬虫類が人馴れするとは、人に触られてもストレスをあまり感じない、触るのを許してくれる、という程度の意味である。積極的に(何らかの意味で)スキンシップを求める爬虫類は殆どいない。有名な例外はアルダブラゾウガメ。集団で生活する種で飼い主を仲間と見なすらしい。

さて、本書に関して中身を紹介してもしょうがないので、すこし考えさせられたことを一つ。環境エンリッチメントという言葉が有る。Wikiには「飼育動物の自然下での行動を促すような飼育環境の改善」,「飼育動物の福祉の向上」と説明される。本書ではこの言葉 (長いので、以下EEと省略する) は使われていないが、その考え方は暗に示されている。例えば推奨されるケージサイズを取っても、日本語のウェブ上で推奨されるサイズより一回り大きいようだ。爬虫類ペットの人気種ヒョウモントカゲモドキは日本では非常に小さいケージと簡素な環境設定で飼育されることが多いようだが、欧米の (限ったわけではないが)、そっち方面 (EE) の意識の高い飼育環境下ではすっと大きいケージ内に土、岩、様々な植物や腐食分解者が合わせて導入される。ヒョウモントカゲモドキは人為的に多様な模様の品種が作られていてコレクション要素があるので、日本の飼育環境は飼育者の管理簡便性と収納性を優先してのことだろうが、後者環境も飼育者のエゴではないと言い切れるだろうか。ほとんど動く必要もない安寧な独房での食っちゃ寝生活は案外幸せかもしれない、等とも思ってしまう。常識的には活発さや肌の艶で判断できるだろう。確かな点は、後者の環境の方が視覚・嗅覚・触覚刺激と運動量が遥かに多く、脳がより刺激されることだろう。

生体飼育のベースラインは適切な栄養と温度や湿度など生命維持に必要な条件の維持、それができないとストレスになる様な行動を可能にする生活環境を与えることだが、EEは、それが幸福であると仮定して、自然下で日常的に接するであろう多種の刺激も与えることを目指す。爬虫類ほど高度に発達した動物であれば、たとえ単独で生活する種でもある種の社会行動、例えば社会学習や多くの場合は縄張り争い、を見せることがある。このような「他個体 (競争者、繁殖相手など) が存在するという刺激」もまた健全な飼育の為には必要かもしれない。より高度な社会性動物、犬やヒト、にとって他個体とのコミュニケーションは精神安定上必要不可欠である。僕は独りでいるのが好きなので休暇中など長期間人と話さないでいることがあるが、今考えると頭の回転が鈍ったり寝つきが悪くなるといった影響が出ていたように思う。言葉がなかなか出てこなくなる。ある人はカエルだったかヘビだったか、スキンシップが取れない類のペットではあるが、とにかくペットを飼い始めたら不眠症が解消したという例もある。爬虫類にとって孤独で居ることがどれだけ悪影響 (或いは好影響?) かは、残念ながら僕は知らない。

カメレオンに興味があるならこの本もお勧め

考えが纏まらないままに書いてしまった。トゲオアガマがムシャムシャと青菜を食べる動画を見ていると僕も野菜を欲しくなり、ここ数週間は普段は食べないような様々な野菜を買い込んで食べていた。良い影響を受けたものである。同時にカメレオンも気に入り、よく動画を見ているが、彼らが食べるコオロギや芋虫、ゴキブリ (といってもチャバネではなく、もう少し可愛げのある種類) は僕には未だ少しハードルが高い。

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