邪馬台国はどこですか?

この世界は可能性に満ちている。

・仏陀は悟りを開いていなかった
・邪馬台国は岩手県にあった
・聖徳太子の正体は推古天皇であった
・本能寺の変は信長が光秀と図った自殺だった
・維新は勝海舟が起こした
・イエスの復活はユダと図ったトリックであった

これらはネタバレではない。それぞれ各章の冒頭で明かされる事柄だ。これらの珍説?に興味が沸いたなら本書を読む価値がある、かもしれない。僕はkindle unlimitedに入っていたので読んだ。

各話題はバーの中での四人の会話で構成される。四人と言ってもバーテンダーと日本古代史が専門の教授は聞き役に徹っし、時折相槌を打ったり進行を促したりするだけ。話の中心は正体不明の中年男性による新説(珍説)披露と、それに対する日本古代史の新進気鋭の女性研究者による反論で進行する。反論とは言ったが、建設的なものは何も無い。ヒステリックに言い返すだけである。

従来の説とは異なる新説に説得力を持たせるためには、(1)新説の筋が通っていて、(2)従来の説では届かない利点が無ければならない。その上で(3)従来の説から想定される反論に一つ一つ応答する必要がある。(1)に関して、本書で提示される説は一見筋が通っているように見えるが、それは恐らく、開示される情報が偏っていたり新説に好意的なものに制限されていることによる。なにせ、その情報の殆どは新説の提示者、中年男性、が自説の正当性を証明するための発言であるのだから。その分野にある程度精通している人でなければ、なにか狐につままれたような、スッキリとしない印象を受けるだろう。披露される論の中には、「論理的に」考えて誠に納得のできるものもある。だからこそ「足りない」部分が怪しく感じるのだ。(1)がこの様に説得力に欠けるのであれば、当然(2)も同様である。

(3)に関しては、単純に、反論者である女性研究者の力量不足である。突っ込みたい点は多々有ったが、例えば死海文書を知らないという設定には呆れるしかない。古代史の専門家が、である。或いは著者の力量が足りないか。同様に自説を披露するミステリーとして『猿丸幻視行』や『歌麿殺人事件』が有名だが、これらはもっと説得力が有った。本書の説とその解説で満足できるのはせいぜい中学生まで、かもしれない。ただし、先述の長編2冊とは違い、限られた紙面で上に挙げた説を手際よく、かつ楽しく紹介する点は評価できる、かもしれない

ひょっとして僕は本書の読み方を間違えていた、かもしれない。これは1999年に「ベストミステリー」ベスト10に入った本だ。つまりはミステリーと分類されたのだ。もしかすると、本書は歴史の珍説をそれらしく紹介し、読者に「反論してみろ、論の穴を見つけてみろ」と挑戦している、言わばメタ・ミステリーと考えられる、かもしれない。僕は統計のトリックや生物学、生態学上の話題であれば其れなりに分かるのだが、コッチ方面はただ面白い説を聞いただけで終わってしまった。知識のある人なら著者が仕掛けるミステリーを楽しめる、かも  な 。

ちょっと気になり、本書の続編『新・世界の七不思議』を、これはちゃんとkindle版662円の金額を支払い購入した。芸風はほぼ同じで、登場者の一人が「アトランティス」を知らないなど、突っ込みどころはアップグレードしている。本書の出版から20年が経つ。著者の力量あるいは芸風が今どの辺にあるのか今後知ることもある、かもしれない

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