イングランド王国前史

前に紹介した本の関連書。大陸のケルト人(ガリア人)が冒険的に海を渡ってブリテン島に到来し始めたのは紀元前7世紀頃とされ、紀元前3世紀ごろにはガリア人の有力な一族であるベルガエ人(ベルギー人)が本格的に移住し、ケントやエセックス地方に定住する。その後彼らケルト人(ここからはブリトン人)は島の南部全域へと広がっていった。島の北側、現在のスコットランドには正体不明の、一説にはケルト人の別系統の一派ともいわれる怖いピクト人(入れ墨?かボディペイントを施しているのでこの名称が付いた)が既に住んでおり、南部のブリトン人は彼らとの接触に悩まされることになる。

ローマ人がブリテン島に遠征したのは将軍カエサルの時である。彼は2度の遠征で島でのローマ支配の基礎を築き、以来、ガリア全土の抑えとして戦略的な要地であったブリタニアは皇帝の直轄地となり、ローマに手厚く保護されることになる。五賢帝のハドリアヌス、アントニウス・ピウスの時代にはピクト人の南下を防ぐ為に長城が築かれている(ハドリアヌスの長城、アントニウスの長城)。こうして、ローマからもたらされる文明生活(と、後年のキリスト教の伝来)によって、ブリトン人は軟弱になっていった。

ゲルマン人の侵攻に悩まされたローマは5世紀初めにブリタニア支配を放棄するのだが、以降もブリトン人の援助要請に二たび援軍を派遣する。そして紀元443年、ピクト人の襲来にブリトン人はローマへ三度目の救援を求めたのだが、この時ローマはフン族のアッティラ王との戦闘のためにそれどころではなく、要請は遂に断られる。最早独力では戦えない程に軟弱化したブリトン人は、当時ユトランド半島に定住していたアングル人、ジュート人、サクソン人たちに援助要請を送り、449年、ヘンギストとホルサという名の兄弟が三艘の船に戦士を満載してブリトン島へとやって来る。蛮族には蛮族を、という訳である。戦士たちは初めの内こそピクト人と戦い北へと追い返すのだが、ブリテン島の肥沃さに魅了され、次第に島での領土拡大を図るのであった。

前置きが長くなってしまったが、ここから始まるのがアングロサクソン七王国の物語であり、本書の焦点となる。この時代の歴史は史料が限られていて、伝説半分といった胡散臭さ(悪く言えば)が面白く感じる。

なんだか久しぶりにスペイン語に触れたくなり、最近出たばかりの教科書を読み始めてはみたものの、まだ地盤が固まっていないイタリア語が頭から押し出されてしまい、どうにもよろしくない。もう少し先までお預けかな。本書自体は、例文が多くて大変気に入っている。最初の一冊として読む場合は少し抵抗が強いと感じるかもしれない。同シリーズで以前に紹介した『本気で学ぶイタリア語』より一段上の抵抗感である。

『本気で学ぶイタリア語』にサラッと目を通した後に続けて読み始めたのがコレ。こちらは更に抵抗が強く、例文も多くかなり細かい部分まで解説されているのでサラッとという訳にはいかない。難易度的には『本気で学ぶイタリア語』の2段上。そちらを終えれば丁度良い内容である。

Audibleでは色々と摘み食いをしつつ、漸く腰を据えて聴き出したのが “Gastrophysics”。食、と言っても料理の科学ではなくて、味わう側の感性に対する物理的、化学的な影響を書いた読み物である。内容自体も面白いけれど、本書に落ち着いた最大の要因は朗読者の読み方や声が僕の好みだからであった。そう言えば僕がわらび餅に特に執着があるのも、味そのものよりはgastrophysics的な理由からである。わらび餅の味自体はボンヤリした、特別に美味しいものではないと思う。