チューバはうたう

「チューバ という楽器をご存知 だろうか? 金管楽器。でかい、重い、音がやたらに低い」
「人間の生理に挑む低さと言っていい」「チューバより低い音の出る楽器は…パイプオルガンを残すのみだ」
「実は自在な楽器なのだ、かるがると音を操るのだ。高音域では滑らかにつややかに歌を歌い、低音域ではあたりの空気いっさいを響かせ、吹き手も聞き手をも包み込み、時にそれは大地の鳴動に連なるのだ。」(冒頭より抜粋)

恒常的に好きな楽器音というのは特に無いのだが、年に何度か好きになるものがある。それはだいたいオーボエやファゴットであり、チェロであり、クラリネットの低音域であるのだが、一時期、チューバが特に気になった。きっかけは小澤征爾グラミー賞受賞(2016年頃?)の記念上映『マーラー:交響曲第1番 ニ長調「巨人」』と『ベルリオーズ:幻想交響曲』。コンサートなどにも行ったことが無く、果たして2時間を映画館でジッと聴き通せるか不安だったが、杞憂であった。元々はマーラーが目当てであり、ベルリオーズはそれまで聴いたことも無かった。お尻の痛くなる上映終盤、第4楽章(5楽章?)のチューバのソロ辺りの不気味な雰囲気とそれに続く狂気に飲み込まれ、日を経ずしてもう一度観に行った。今度はベルリオーズを目当てに。

チューバを生で、ちゃんと意識して聴いたことが無いのでアレなのだが、チューバーの音には周囲を包み込む「プレゼンス」が伴うという。低周波なので距離減衰が小さいからか、チューブの先端がホルンのように開いているので音が拡散するからか。可聴ぎりぎりの低い音域で感じられる、空気の震えが伝わるのだろうと想像する。何で見た情報だったか忘れてしまい、ネットでこの言葉を検索してもソレらしいものが見つからなかった。ともあれ、チューバの音は特別なのだ。CD音源からウォークマンを通して中々聞き分け辛くはあるが、オーケストラの背後に低く鈍く確かに在る感じ、これが良い。宮沢賢治の『岩手山』を何故か思い浮かべる。

表題作に関してはあまり言うことが無い。「チューバ」が売りであろう。主人公の女性に少しだけ違和感を感じたのは、著者が男性だからであろうか。何となく男が描写する女という印象、もしかしたら先入観、が付き纏った。他2編は読んでいない。

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