白光

今月中頃に再オープンしたデパートの地下に地元の野菜や果物等を扱う店が入っていて、以前僕が通っていた駅ビルのスーパーよりずっと安く購入できるので、ほぼ毎日立ち寄っている。そこで見つけたアイスプラントという野菜、シャリシャリとした歯応えが面白くて見つける度に買っているのだけれど、あの脆さで自然界に生存できていることが不思議でならない。何も付けずにそれだけを食べると、微かな塩味と遥か遠くの方に青臭さ(生臭さ?)を感じるのみで、なんだろうか、何かが足りない。ものすごく薄いコーヒーを飲んだ時に感じる物足りなさの味がする。

最近読んだ本も物足りないものばかりだった。『孔丘』に続いて読んだ宮城谷昌光の比較的新しい方の本二冊も、題名はここでは書かないけれど、興味が維持できなくて両方とも上巻だけ読んで止めた。唯一最後まで読み通したのが表題の『白光』、明治時代に日本人初のイコン画家となった女性の人生を描いた小説であるが、僕には主人公の心の柔軟性の無さが読んでいて辛かった。そんな主人公の頑なさと対比するように描かれる、ニコライ主教の慈愛と思慮深さが心に沁みる。初めのうちこそ朝の連続テレビドラマにちょうど良い内容だと思っていたものの、もしそんなことがあったとしても、少々脚色を加えないと朝から見るには合わないかもしれないね。楽しんだ度合いは5点満点中3点。

Amazonの「ほしい物リスト」、ちょっと良いかなと思った程度の本も取り敢えず放り込んでいるのでリストが膨れ上がってしまい、不要なものを一旦整理した。この時にウェールズ語の文法書 “A Complehensive Welsh Grammer” が中古でかなり安く出ていたのを見つけて即購入する。以前読んだ『ウェールズ語の基礎』(三修社)は文法事項の全体像をカバーしてはおらず、日本の英語教育過程で言うなら中学2・3年生くらいまで、尻切れ蜻蛉感が残った。本書でその先に進むことができそうである。もう結構忘れてしまったので、先ずは三修社で復習したい。

そして何を血迷ったか、ウェールズ語で書かれたウェールズ語文法書 “Gramadeg Cymraeg” も同時に購入する。これも安く出ていた。本書は上の英語本と同著者、出版年も1997年(ウェールズ語本)と1993年(英語本)で近く、ページ数も約500ページとほぼ同じ。もしかして本書は上の英語本のウェールズ語翻訳版なのかも、と期待したのが理由であった。まだ届いておらず未確認。ウェールズ語では16世紀の『ウィリアム・モーガン訳聖書』が聖書の名翻訳として名高いと聞いているが、こちらは流石に手が出せない。中2の英語力相当の威語でどうにかなるものではないだろうし。

フィンランド語は現在、カレワラをちょびちょびと、蝸牛の歩みにも満たないくらいのペースで読み進めている程度にしか触れていないのだが、何だか文法事項の記憶があやふやになって来たので、この辺りで一回お浚いすることにした。今回選んだのは『フィンランド語文法読本』。フィンランド語に関しては他に良い本が容易に手に入るので、定価が高い本書はこれ迄購入を見送って来たところ、新品同然(と書いてあった)の中古品がかなり安く出品されていて迷わず購入する。まだ発音の解説を読んだのみ、でもこれまで知らなかった事が説明されていて、これは期待できそうである。

表題書を読み終わって昨日から読み始めたのが『エッダとサガ (新潮選書)』。元は約50年近く前に出版された本である。北欧神話(ゲルマン神話)について書かれた詩篇「エッダ」とアイスランドの出来事を散文で記録した「サガ」の簡潔な解説と、それぞれを代表的する語りの翻訳(要約?)で構成され、アイスランドの文化的特異性がよく分かる内容となっている。読み慣れない固有名詞を無理に声にして読んでいると、何だかアイスランド語をやりたくなってしまった。でも、言語の古い形態が比較的保存されているため、ゲルマン語派の中でもとりわけ難しいと聞いているしなあ。