読みかけの本など

読みかけの本ばかりでアレなのだが、特に面白いと個人的に思うものが何冊かあるので、前倒しで少しばかり書いておきたい。後日個別に取り上げて紹介するかもしれない。Audibleでハイペリオンシリーズを聴くのにも飽き、久しぶりに未読のタイトルを聴きたくなって選んだ内の一つが “Humankind: A Hopeful History”。日本語版も少し前に出ていて、興味を惹かれた本である。日本語版の購入を躊躇った理由は、日本語でも一冊に十分収まる容量を、わざわざ薄い二分冊にし、その為に行間まで広くとる出版社の根性が腹立たしいから (訂正: 広いのは行間ではなくて余白でした。活字自体もやや大きいと思う)。醜い本は買いたくないのだ。

さて肝心の内容は、三分の二ほど聴いた時点での結論だけを言うなら、無茶苦茶おもろいやんけ、である。思わず地の言葉遣いが出てしまうくらい感心した。これだけではアレなのでもう一寸中身に触れると、著者は人間の本性は生まれながらに「善良」であるという主張を、様々な事例や心理学実験などを引用しながら説明する。記述に関して一つだけ気になった点を指摘しておく。著者は導入部分でリチャード・ドーキンスの利己的な遺伝子仮説について少しだけコメントするのだが、どうも正しく理解していないように思われる。だたし、該当箇所は瑣末な部分なので適当に聴き流しており、僕がキチンと聴き取れていない可能性も無視できない。

次もaudible。”Out of Thin Air” (上はその日本語版) はイギリスの文化人類学者で自身もマラソンランナーである著者がエチオピアでランニングの武者修行をした時のエッセイである。長距離走界でエチオピアが修羅の国であることは、国内大会で勝つことが国際大会よりも困難である点からも伺える。国際大会ならば精々数人の同国人(加えて数人のケニア人)と競うだけでいいのだ。エチオピア人のランニング環境や競技生活、競技観が分かってとても面白いのだが、一冊目の本には劣る。半分ほど聴いたところで最初のタイトルを聴き始めてしまい、現在は中断している。

これを書いている当日の朝に通勤電車で読み始めたのが上に載せた『フィールド言語学者、巣ごもる』。内容は多岐にわたる軽いエッセイであり、「言葉狩り」に対する意見など共感できる話題ばかりで時間を忘れて楽しみ、危うく乗り過ごしそうになる。著者は自称に「ボク」を使う。その理由は一般的な一人称の中で最も汎用性が高い、つまり「オレ」や「ワタシ」などとTPOに応じて使い分ける必要があまりないかららしいのだが、僕も全く同じ理由で「ボク」を常用する。こうしたささやかな共感もポイントが高い。「ワシ」などは使ってみたいものではある。

ついでにもう一冊、ジャケ買いならぬタイトル買いしたものに『我と汝』という本があるのだが、これについてはまた別の機会に。