三体2 黒暗森林

先日読んだ『盤上の夜』と比べて、物語のスケールとSF濃度は格段に高く、面白さは一回り上だった。娯楽小説には二種類あると思う。一つ目は文章そのものを楽しむもの。多くのコメディーや子供向けの本、娯楽小説と呼べるか分からないが『失われた時を求めて』のような小説がこれに当たる。急いて内容を入れようとすると魅力を失う。二つ目は展開・プロット・ストーリーを楽しむもの。ミステリー、サスペンス、SF等に多い。文字媒体である必要はなく、漫画、映画でも面白さは変わらない。このタイプの小説を読む時は目が先滑りするので、目に入る漢字を拾って読む様な雑な読み方になりがちである。丁度漫画を読むのに似ているので、僕は勝手に「漫画読み」と呼んでいるのだが、本書も読み始めてすぐに漫画読みになった。

内容にはあまり触れたくないので、面白かった点を一つだけ。本書でキーワードになるのが「宇宙社会学」なる研究分野である。この言葉で検索すると幾つか類似の言葉がヒットするので、本書の創作かどうかは分からない。本書では、宇宙には無数の文明が存在してきたと前提して、二つの公理 ( 公理1: 文明は生存を優先する、公理2: 宇宙は有限である ) を与える。そして「猜疑連鎖」と「技術爆発」を仮定すると、自ずと或る結論が数学的に導かれる。数学とは数字も扱う学問であり、その肝はある種の思考法である。

「技術爆発」は地球文明が経験してきたことなので説明は要らないだろう。「猜疑連鎖」に関しては以下のように説明される。文明AとBが有ったとして、それぞれは善意の文明か悪意の文明である。善意であれば善意の相手と共存を、悪意であれば相手を滅ぼそうとする。共存の道は両者が善意の文明であり、かつ両者が互いを善意の文明と認識する場合のみ成立する。さて、文明Aは善意の文明である。文明Bは「文明Aが善意の文明」と認識できるか分からない。文明Aは「文明Bは文明Aを善意の文明と認識している」と認識できるか分からない。文明Bは「文明Aが文明Bは文明Aを善意の文明と認識していることを認識している」と認識できるか分からない。この連鎖は入れ子状に何処までも続く。僕たちの日常ではこの連鎖は即時の意思疎通によって最初の1,2ステップで留めることができるが、広大な宇宙空間では通話の時間差や互いの意思疎通方の相違がそれを許さない。

馴染みのない言葉で説明されると目新しく感じるが、これはゲーム理論の「囚人のジレンマ」を別の言葉で言い換えたものである ( 多分。習ったのはもう20年も前なので自信は無い ) 。そして最適解は一つである。その結果としての宇宙を本書では「暗黒森林」と表現する。このネタが全編を通して効果的に使われていた。

良い本 ( 面白い本 ) を読むと同類の本を読みたくなる。本書の続編『三体III:死神永生』が楽しみになった。英語版なら待たずに読めるのだが、英語は漫画読みできないのでどうしようか。SF気分はもう少し続く。

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