いちばんやさしい使えるベトナム語入門

前に少し触れた『スウェーデン語 (世界の言語シリーズ12)』は本当に楽しかった。以前に紹介した『熱力学の基礎』と同様に僕はこれを全て、隅から隅まで喫茶店で読んだのだが、毎日立ち寄って一時間程粘る時間が楽しみになっていた。スウェーデン語など英語やドイツ語とそう変わらないだろうと侮っていたら、各章のそれぞれで色んな発見があり、そのいくつかはここで紹介するに値すると思うのだが、この本は今現在手元に無いので後に追記するかもしれない。独特の表現や細かい約束事も多く、一読しただけではとても覚え切れないものの、良い区切りなのでスウェーデン語は一旦離れようと思う。これ以上は惰性が勝ちそうなのだ。

そこで前から気になっていた『デンマーク語(世界の言語シリーズ10)』を読み始めたのだが・・・。デンマーク語はスウェーデン語とほとんど変わらない。書き言葉としては語尾が少し違うだけで殆ど同じとも言える。語尾変化のパターンなどはより単純であるらしいのだが、独学する上で大きな問題が一つある。発音が(少なくとも日本人にとっては)とても難しいのだ。総じてモゴモゴと話す言葉であり、口をあまり開けずにモゴモゴと17種類の母音を使い分け、聞き分けないといけない。これだけで大変な脅威なのに、付属のCDを聴いていると、字面からは想像できない音が出て来る(ことがある)。例えば”hedder”(〜と呼ぶ)から”d”の音は僕の耳にはどうしても聞こえず、どういう発音なのかネットで調べてもよく分からなかった。デンマーク語に関しては、『スウェーデン語の基本入門から中級まで』と同レベルで音声ファイルが充実した語学書の登場を待ちたい。なお、以上はデンマーク語を少し齧っただけ、上に挙げた本のたった6分の1を読んだに過ぎない人間の印象であることは注意して欲しい。音声方面がクリアできる人なら、この本は説明も詳しくて良い語学書だろうと思う。多分。
(追記 デンマーク語特有の”d”の音は “soft d”と呼ばれるらしく、youtubeで解説動画が見つかった。でも難しい。)

さて、替わりに何をしようかと迷い、これも以前から気になっていたベトナム語を何となく、本当に何気なしに齧ってみることにした。気になっていた理由は日本語や英語と響きが余りにも異なるからなのだが、その特徴は以下で少しだけ触れる。ベトナム語には特に興味を惹かれる語学書がなく、表題書は新しいという理由のみの選択である。その中身はと言うと、後日詳細に紹介することがあるかも知れないが、ちょっと簡単過ぎると感じる。言い方を変えれば、手っ取り早く概要を知りたい場合や、この種の勉強に慣れていない人には良いかも知れない。音声ファイルは日本語部分がはっきりと邪魔である。

ベトナム語については、幾つかの母音の使い分けと6種類の声調に慣れることが最初でかつ最重要な一歩で、急坂が有るとすればここだけ、と言っても良い(らしい. 取り掛かったばかりなので実際のところは知らない)。この点は上の本よりyoutubeの動画の方が遥かに有益である。検索すれば非常にわかりやすく発音を解説したベトナム語学習チャンネルが三つほど見つかった。その先の学習カーブは多分中国語と同様で、文法的に難しい点は無く、語彙と用例を増やす緩やかな上り坂が続くのだろうと想像している。因みにベトナム語は文字から全ての音声情報を読み取れるので、どう発声したらいいかで迷うことが無い。デンマーク語を齧った直後でもあり、ホッとする。中国語とは言語系統が異なるものの中国に支配された歴史が長く、過去には漢字表記を用いていたため、漢字由来の言葉が六割を占めるそうである。なので日本人にはほんの少しだけ取っ付き易い。

ベトナム語は諸言語と比較して音節あたりの情報密度が高く、これは単語が基本的に一音節で構成されるからだそうだ。それゆえ比較的ゆっくりと発話される。その真逆が日本語で、音節あたりの情報量はベトナム語と比較すると半分くらいに減り、比較的速く発話される。その結果として、単位時間あたりの情報伝達量はベトナム語の3分の4くらいになるらしい。日本語を母語にする僕たちにとって、ベトナム語が他言語と比べても異質に聞こえる理由はこの辺りに有るのかもしれない。この論文(2019年?)は僕は読んでいないが検索すれば直ぐ見つかるので、興味のある人は読んでみるといいかも知れない。

この情報伝達量や密度が書き言葉ではどう変わるのかも気になるところである。僕の印象では、文字あたりの情報密度はともかく(アルファベットと音節文字の差もあるので)、人間が一度に、つまり単位時間あたりに読み取れる情報量は日本語ではかなり高いと何となく思っているのだが、どうだろうか。また情報密度に関しても、西洋語から日本語に翻訳すると短くなるという話も聞くし、逆に長くなるという話も聞く。カタカナの頻度やフォントも関わってくるので一概にこうだと言えないのだろうが、実のところは如何なのだろう。