はじめてみようアラビア語
近頃は語学書ばかり紹介している気がするが、春は色んな活動、特に語学を始めるのに最適な季節なので、これは自然な傾向なのだ。僕などは用も無いのにぶらぶらと外出し、わざわざ遠方の書店などに出掛けるので、Audibleを聴く時間が頓に増えた。今はハリーポッターを一巻から順に聴いている。僕が聴きなれたアメリカ版はAudibleには入っていないが、イギリス版の朗読者ステファン・フライも上手い読み手なので不満は特に無い。書店に行く度に手に取ってしまうのが以前に少し触れた大阪大学出版の「世界の言語シリーズ」の最新刊『アラビア語』で、そこまで気になるならと、とうとう購入してしまった。
買ったからには当然読むつもりなのだが、その本は初心者にとって大きな問題が一つ有って、普通の日本人には馴染みが無いはずの例のあの文字の紹介と解説が無いのだ。文字と単語については別冊としてこの夏に出版予定とある。僕の性格上、それまで待ってられない(待っていると興味が他に移ってしまう)ので、文字に関しては別に補う必要があり、僕が見たのが上に載せた『はじめてのアラビア語』とyoutube。動画の方が断然お薦めである。上の本は数年前に読んだ同シリーズの『はじめてのロシア語』がとても面白く、その勢いで読んだものなのだが、ロシア語と違って情報が詰まり過ぎていて、初心者の為の読み物としてはそれ程楽しめなかった覚えがある。数年ぶりではあったが一度覚えたものでもあり、文字を思い出すのは容易だった。因みに上の本、サイズが小さいという以外にお薦めな点はあまり無い。
その後に読んだ本で少しお薦めしたいのは表題の『はじめてみようアラビア語』。本書にも例のあの文字の解説は付かないが、文字を一旦覚えたならその読み方に慣れるのに中々いい本であった。上の画像にある様に、アラビア語使用地域の様々な文化を、アラビア語の表記も付けて紹介したもので、僕は寝床でパラパラと眺めていた。ただし、紹介される情報は表層をサラッとなぞった程度なので、ある程度知識のある人にはお薦めできない。
これだけでは『世界の言語シリーズ アラビア語』に取り掛かれる自信が全く無く、根気とやる気のある人ならいきなり突撃しても大丈夫なのだろうが、僕にはもうワンクッション必要と感じたので、数あるアラビア語の入門書の中から選んだのが上に挙げた『はじめましてアラビア語』。これを書く段階でほんの3,4章を読んだに過ぎないものの、これは凄く良い本であると思う。説明が丁寧で分かりやすい。この項に取り上げた本の中では一押しである。思わぬ掘り出し物だった。欠点が無いわけではない。まず、取り扱う事項がわりと細かい(と思う)ので、タイトルの「はじめまして」から連想する程には手軽な本ではない。なお、細かいなどと書きはしたものの、アラビア語(フスハーの方)のように古い形態を残した言葉は一般的に難しいものなのだ。二点目は、印刷文字が小さいこと。特にアラビア語の母音記号は目を凝らさないと見えないものもある。どうやら僕も、そろそろ老眼を気にする時期なのだろう。
以下余談。本とは別に知ったことだが、アラビア語の語彙数は約100万、或いは諸説あるものの1000万を超えると言う人もいる。諸言語と比べて語彙数が多いと思われる英語で約100万と以前どこかで聞いたので、これはなかなか凄い数だ。ある動画ではアラビア語ネイティブがアラビア語の表現の豊かさを自慢げに語っていた。一例として、「ラクダ」を表わす言葉が1000くらい有るらしい。「若いラクダ」とか「病弱なラクダ」とか「リーダーシップがあるラクダ」とか。語根となる三つの子音に色々と付加するアラビア語の造語力のお蔭と言う気がする。よく知らないが。因みに日本語の場合は広辞苑に収録される語彙数が約25万(何だったかの辞書が50万)なのでその辺りが下限である。もちろん語彙などは幾らでも創作できるので、ある程度の公用性を前提にする曖昧性があり、その総数など誰にも分からない。生物の「種」の数を推定するようなものだろう。「種」の定義も同様に曖昧なものである。これもまた何の本で読んだか忘れてしまったのだが、読み書きと会話ができるだけでは「アラビア語ができる」とは言えない。何巻にも跨る大型の辞書を丸暗記するくらいの語彙力を以ってようやく、「アラビア語ができる」と言われるそうだ。