13歳からの世界征服

面白い本だったので、手短に紹介したい。先ず知っておかないといけないのは、著者はイスラム法学者でイスラム信者であるということ。その彼が、編集者が収集した中高生の悩みや青少年の悩みアンケートで上位に挙がる相談事に答えるという体の本である。彼の回答はとてもスッキリしていて、曖昧さが無い。なお、発言を真に受ける必要などなく、ネタ本として読んでもいい。例えば、

Q. 「彼女が欲しいです。・・・」 A. 「まず役所に行って婚姻届けをもらってきましょう」
Q. 「なぜ人を殺してはいけないのですか」 A.「人を殺していけない理由なんて、どこにもありません」
Q. 「勉強と部活ができなければ、自分の存在価値が無いように思えて辛いです」 A. 「可愛くなりましょう。・・・初心者は猫の真似から入るのが良いですね」
Q. 「いじめがきっかけで登校拒否になりました」 A. 「これはもう、そのまま続ければいい。極めてください」

そして「夢も目標も持てません」という悩みには、絶対に実現しない夢を持つことを勧める。著者の夢である「カリフ制再興」を是非一緒に目指してもらいたいがと断りつつ、取敢えずタイトルの「世界征服」が良いだろうと答える。どうしてそんな回答になるのかには、全てちゃんとした根拠がある。人の行動を規定するのは個々人と神との一対一の関係のみであり、それ以外の価値(観)は幻想にすぎないというイスラム信者なりのスッキリとした考え方である。日々の生活に疲れている人は少し気が楽になるかもしれない。疲れは大抵、どうでもいい幻想が原因なのだから。

僕は学生のころから「常識が無い」と言われた。高校に入って直ぐの担任との面談でも、「あんた常識無いやろ」(批判的な口調ではなかったが)とズバリ言われて、自分はそういう人間なんだと自覚した。実際、自分が興味のある事柄を除いて、ニュースや新聞の類を一切見なかったので「常識」は当時も今も無いのは確かで、当たり障りのない時事ネタの会話が苦手だ。さて、本書での悩みの一つに「本当の友達が欲しい」というものが有った。著者の回答は、「自分と同じ方向(目標、趣味など)を見ている人を探しましょう」、「やることが何も思い浮かなければ、とりあえずアラビア語をやりましょう」だった。「日本でアラビア語をやろうと思うのはコミュニケーション障害の変な人ばかりだから、きっとあなたも普通に受け入れてくれるでしょう」と続く。常識の無い僕が始めたのだ。この最後の発言はたぶん正解。