骨灰

前回に続きホラー気分のまま読んだのが表題書で、著者名買いであった。東京のビルの建築現場から地下に伸びる階段へ迷い込んだ主人公が祭壇を見つけ、それに関わった為に身辺に怪異が起こる、という内容。荒神(でいいのかな?)の祟りは人の理屈が通じないので幽霊より一段も二段も怖い。でもこの本はそんなに怖くなく、少し薄気味悪い程度。読み物として良く纏まっていたとは思うけど、主題がイマイチなのか、あまり面白いと思えなかった。10点満点で点数を付けるなら、『爆弾』と同じく5点くらい。

先週に3冊まとめ買いしたミステリー本の本命はコレ。舞台は山奥の地下廃墟。遊び半分で探検に来た若者7人と、迷い込んだ家族3人が一夜を過ごすことになるが、突然の地震によって出入口が岩で塞がれてしまう。一方で既に水没していた下の階の水位がゆっくりと上がり始める。地上に出るためには出入口を邪魔している岩を階下へ落さねばならないが、その作業をする人は階下に閉じ込められる。地上に無事脱出した者が助けを求めて人里に走ったとしても、山奥かつ水位の上昇で救助が間に合うかどうかは分からない、という設定である。そんな状況下、岩を落とす工具を探しに皆が廃墟の各部屋へと散った間に、若者グループをこの廃墟へと誘った青年が殺害される。取り残されるのは犯人しかないと意見が一致し、犯人探しが始まる。

なかなか面白かったが、どうにも腑に落ちない要素が幾つかあり、モヤモヤした読後感になった。細かく論いたくないので大雑把に書くと、舞台設定の脆弱さが難点の一つ。地下もっと深い場所にある施設か海中(深海)施設であれば著者が想定した通りの舞台が作れたと思う。本書では時間的猶予があり過ぎたし、そもそも谷川の位置から考えると、この廃墟は完全には水没しないと思われる。もう一点は犯人の咄嗟の判断力と行動力。これが最も、何と言って良いか、気持ち悪い要素であった。こういう行動を瞬時にとれて平静を保てる人間が、日常生活で尻尾を出さないことがあり得るのだろうか。などなど、不満もあったが、最後はしてやられたと思わされたことだし、個人的点数は10点満点で6点。

この2冊より楽しかったのが書店で無料配布の小冊子『私が選ぶ国書刊行会の3冊』。国書刊行会出版の本は癖のあるものばかりで僕は殆ど読んだ覚えが無く、唯一記憶に有るのがジョン・クロウリー『リトル、ビッグ』のみ。もう一回読みたいと思ってアマゾンで調べたら、上巻は100円から、下巻は5000円からだった。下巻まで読み進めた人の少なさが良く分かる。最も気になったのは数人が挙げていた『モスマンの黙示』。怪しげである。