禁断の中国史
中国という地域はいろんな民族が入れ替わり支配してきた。漢民族という近年になって登場した言葉が具体的に包括する範囲は良く分からないが、長い中国の王朝史の中でその漢民族が支配したといわれるのは、漢・唐・宋・明くらいである。唐も鮮卑系だったっけ? 自王朝の正当性を喧伝するために前王朝の歴史を悪く書き記すという伝統があり、それらに加えて風習面や制度面での酷さが取り上げられる。本書を簡単にまとめると、「中国にはこんな残酷な歴史・風習があった。色んな本で確かめて感じたこの嫌悪感を、是非読者にも伝えたい」という感じかな。小説家らしく、嫌悪感の部分が前面に出ている。
内容自体は目新しいものではなくて、どこかで見聞きしたものばかりであった。巻末に参考文献が幾つも並べてあるのだけれど、その内のどれがどの章、またはどの記述に対応するのかは分からず、ただこれだけの文献を根拠としたという漠然とした権威付けの意味しかないように感じる。少し楽しめたのは科挙の章。中国と、特に朝鮮の近代化が遅れた最大の要因でもある。その競争の苛烈さに、別に挑戦するわけでもないのに、頭がくらくらしてお尻がキュッとなった。内容自体は中公新書の『科挙』を十分の一に薄めた程度で、またそちらを読みたくなる。
本書は誰かに勧めようとは決して思えない。現代の日本人の視点という二重に偏向した価値観で、長い中国史からとりわけ惨い部分のみを取り出して腐しただけの本である。僕自身は、発売日から暫くの間は近場の書店で見つからず、ネットで注文した。少しでも立ち読みしていれば買わなかったのに。それでも読んでしまったのは著者の文章が読みやすいせいだろう。
お口直しにと読み始めたのが今井むつみ著『学びとは何か』。これはちょっと面白い。より気になる本を幾つか買い込んだので、最後まで読むかは分からないけれども。本以上に今現在嵌っているのが、動画のオレゴン世界陸上。だいたい午前中までyoutubeで生中継していて、作業しながらチラ見している。陸上とかスキー(特にアルペン)が観戦して一番楽しく感じるのは、試技とインターバルのメリハリが個人的に合うからだろうか。
もう一つはまっているのが『ゲームさんぽ』というyoutube動画の、古代ギリシャ専門家が古代ギリシャを舞台にしたゲームの世界を解説するシリーズ(ゲームタイトルはアサシンクリード?)。専門家の女性がオタク感全開で、タイトルに入るΛ(ラムダ)マークからラケダイモン(スパルタ)を見て取りテンションが上がるなど、本当に楽しくてたまらないといった感じでケラケラと喋りまくるのが観ていてとても楽しい。豆知識もまた面白く、例えばパリスはずだ袋、オリオンは小便たれ増という意味であるらしい。ビール会社の人は知っていたのだろうか。