踏切の幽霊
幽霊、宇宙人、祟り的なものが相変わらず大好きで、これらより興味を惹かれるものといったら宇宙か生物、古代文明のあっと驚くような新発見・新解釈くらいである。例えば「時間は存在しない」とか、「時間には最小の単位がある(粒子的である)」とか。両者が相容れない点も含めて面白い。SFで何か良い本が無いかなと思って書店を見回っていると、ミステリーの方に面白そうな本が幾つか並んでいた。中でも表題書『踏切の幽霊』は幽霊譚+ミステリーという好物中の好物なので真っ先に飛びついた。帯に書いてある著者の前作『ジェノサイド』は内容の方は全く覚えていないが面白かったという記憶だけある。
本書の内容はというと、都内のとある踏切で立ち入り事故が多発しており、その原因が幽霊であるらしいと分かって、雑誌の記者が心霊写真特集のネタとして調査を始め、幽霊の身元を捜索する。類似の幽霊小説として、怪奇現象の原因を土地の歴史に遡りつつ調べていく『残穢』に構成上は似ているなあと感じたが、本書にはそちら程のゾクゾクするような怖さやワクワク感は無く、少し悲しいお話であった。描写は控え気味で全体的に薄味。僕は好きなのだけれど、物足りなさを感じる人もいるかもしれない。僕の好みに合うかどうかを10点満点で採点すれば6点か7点くらい。
続いて読んだ『爆弾』。何かのランキングで一位とあり、気になっていた。無差別連続爆破事件の被疑者を取り調べて次に起こる爆発を阻止するというお話で、出だしは無茶苦茶面白い。読み進むにつれ、初めのうちは展開の面白さもあって気にならなかった描写の濃さというか、描写の癖が次第に鼻につくようになる。被疑者と取り調べ担当刑事の会話部分は特に、字義通り冗長であった。少し前に見たアニメ(キメツのヤイバ他)でも感じたことだが、語りが無駄に多いのが近年流行りの作風なのかもしれない。ドストエフスキーも登場人物に長々と語らせるが、そちらには冗長感や不快感は感じず、品位の差だろうか。好みの点数は5点くらい。内容をすっかり忘れたとして、他に読みたいものがよほど無いのであれば読んでも良いかなあという位の読後感であった。
同時に購入したミステリーがもう一冊あるのだが、それはまたの機会に。最後に、面白いと話題のインド映画『RRR』を観て来た。格好良さで真っ向勝負の映画で、3時間が長く感じず、体温が少し上がる。同じ長編でも青い人の続編(海のやつ)より遥かに良い出来であった。マハーバーラタとラーマーヤナを下敷きにしていることだけは分かったが、インド神話・文学に無知なので、きっと各所に散りばめられていたであろう小ネタは良く分からず。知識があれば更に楽しめたと思われる。