中国語は不思議

サッカーW杯をしっかりと観てしまうので読書の時間がなかなか取れなくなった。普段はサッカーに関心が無い僕にとって解説が付くのはありがたく、この間の日本戦などは本田選手の素のままの解説が想像以上の面白さであった。母国贔屓は好悪とは別のところにある心情(選択ができないから)なので日本チームを応援するのは当然として、これ迄にも僕はもう一つ別のチームを選んで応援することにしていて、前回大会ではそれがアイスランドであり、今回はウェールズにした(追記: と書いたら負けてしまった)。選手は誰一人知らないのだけれども。ウェールズと言えばレッドドラゴン。先週映画を観に行った時にダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)の映画の予告が出てきて、無茶苦茶楽しみである。D&Dは2024年頃に第6版が出るという噂。

今週はしっかりと読み通した本が無くて、摘まみ食い的に読んだものばかりであるが、先ずは『中国語は不思議』。これは中国語の文体論の専門家によるエッセイで、中国語にまつわるアレコレが紹介されており、中国語に興味が有る人や勉強したことが有る人には興味深い話題が沢山出てくる。あと蘊蓄好きな人。昔の中国語の音を復元する話は面白かった。中国語ではもう変容してしまった古代の音が漢字文化圏には保存されていることがあるそうで、韓国語やベトナム語、そして勿論日本語の読み方からある程度推定できるらしい。例えば「気」が「キ」から「チ(chi)」と読まれるようになったのは約400年前(清代)のことであるそうな。満州族的なアレコレが入ったのだろうか。ただし「海(hai)」が日本語で「カイ(Kai)」となったのは、この言葉が入った当時の日本にハ行音が無かったから(現在ハ行音で読むところはパ行またはファ行で発音していた)という例もある。そう言われてみると確かに、カ行とハ行の発音では音を出す際に息を擦る(専門的な用語は分からない)部分が喉頭上部で共通している(一方のパやファは唇で出している)。

ピンインの話が少し詳細で疲れたが、それで思い出した。中国語の学習では発音の占める割合が(特に日本人にとっては)他の言語以上に高く、文法的な決まり事に複雑で理解の困難な要素は皆無なので、発音を過ぎたら語彙や語の用法を増やす段階に直ぐに移行できる。文法が嫌、って人向けの言語であった。この様に語彙自体の占める役割が大きい中国語の(または漢字の)語源的な話はとても面白いが、語源と字源は区別しておかないといけない。このことは同じく漢字を使う日本語でも同様である一方、アルファベットを使う言語では音がそのまま字面になるのでこの混乱は起きないのかもしれない。面白い豆知識を一つ。ロシア語の「будить(ブディッチ)」は目覚めるという意味であるが、これは「仏陀」と同語源であるそうな。

『ときは、ながれない』はタイトル一発買いの一冊。ヘラクレイトスの「万物は流転する」(そして僕たちが日常的に体感する変化の有様も)を真っ向から否定する題名のように感じるが、それは事物の変遷の前提に「とき」を置いているからであり(多分)、事物の変遷の結果として「とき」を感じるのだと考えれば、なにも矛盾はない。そのことがまず頭に浮かんで、それでは何を言いたい本なのだろうと気になって購入してみた。冒頭から少しへ理屈っぽく感じて(そう感じるのは勿論僕の方の問題である)あまり進まないのだが、ちょっと面白い思考実験も出て来ており、キッパリと中断するのも惜しい気がする。例えば素粒子レベルの運動も完全に静止した宇宙。これは現在の宇宙の連続線上?に存在するとも言えそうな状態にありながらも、物理的な相互作用が皆無になるので、「何も存在しない」と同じなのではなかろうかと考えて少し怖くなった。小さいころに夢でうなされた時に見ていた悪夢の内容が正にそんな感じの宇宙的恐怖だったことを思い出す。

こちらは同著者の『シュメール』や『古代メソポタミア全史』が面白かったので読み始めてみた。未だ冒頭数十ページしか読んでいないが、少し急ぎ過ぎな気がする。人類の歴史時代の半分以上(前3500年から約3000年間、アケメネス朝?まで)を新書一冊で駆け抜けるのだから仕方がないとも言える。

今現在で一番はまっている、というか気に入っている本がコレ。良い本なのでもう一冊、保存用に注文したところ、ネット古本市場での値段が一気に2,3倍近くまで高騰(これを書く時点で「可」品質に8000円の値が付いていた)してしまった。これ迄長年動きのなかった本が立て続けに売れたからだろうが、僕一人が買っただけなので、もう売れないんじゃないかな。新しい方も「可」品質だったが、前回よりも更に更に良い状態である。内容の方は別項で後日改めて紹介するとして、気になったのが本巻末に張られた値段。最初に購入した第9刷(昭和46年発行)は定価1500円であり、2冊目の第8刷(昭和42年発行)は定価100円とあった。4年の間に何があったのだろう。ミスプリント?