天離り果つる国

歴史小説の気分のままに、続けて読んだのが『天離り果つる国』。帰雲城を本拠とする内ケ島氏が統治する白川郷に焦点を当てた歴史小説で、「戦国エンタテインメント」(本書の帯より)と形容するのがそぐはしい展開であった。お話は諸国行脚中の竹中半兵衛主従が白川郷で赤子を盗賊(?)から救出するところから始まる。半兵衛の弟子として成長した主人公はあるお役目の為に白川郷を訪れる。里の美しさと領民の暖かさに触れた主人公は領主と共に、他国とは同盟関係を結ばない独立の道を目指すが、信長、後に秀吉がそれを容易には許す筈がない、という内容。主人公を狙う悪僧(「悪」は強いという意味)を登場させるなどエンターテインメント要素が強い。宮城谷昌光の平坦さが心地よくなっていた僕には、やや起伏が過ぎた。以下は歴史的事実。白川郷と帰雲城は1586年の厳冬期に発生した、丁度この地域を震源とするマグニチュード7~8クラスの大地震(天正地震)によって完全に崩壊し、内ヶ島氏は滅亡した。

さて次に何を読もうか迷う。宮城谷氏に戻ってもいいけど、『星を継ぐ者』をaudibleで聴き終わったところなので、その続編を読んでみたい気分でもある。本で読んだ当時はこの傑作に続編なんて蛇足に思えたので、ジェームズ・ホーガンは『星を継ぐ者』以外は未読のままであった。いきなりaudibleを聴いても、何処かでプロットを見失うだろうしね。迷いながら書店をブラブラしていると、『ユリイカ 2023年11月臨時増刊号』が目に飛び込んできた。パーティー効果で、トールキンなどの単語に敏感なのだ。一気読みしたいようなものではないが、読んでおいた方が良さそうな特集である。

ペルシャ語の学習で主に使っているのは『基礎ペルシャ語』。初学者向けに決して欲張らないボリュームで、一歩ずつ解説してくれるのが本当にありがたい。未だにパッと見ても音がすんなりと出てこないアラビア文字も、本書の内容であれば負担にならない。今のところペルシャ語は文法方面の単純さが英語に似て少し物足りなさを感じてしまい、古典ギリシャ語が妙に恋しくなってしまった。

『古代日本語文法』の方は蝸牛の歩みだが、相変わらず面白い。現代日本語とのつながりを通して、日本語ってこうなってたのかと啓かれる気がするような、しないような?