ラテン語四週間
現在は読みかけの本ばかりで紹介できるものが無いので、場つなぎ的に語学書を。表題書は僕が今読んでいるラテン語の教科書で、古い本だけれどこれが中々良い。記述は簡単に要点だけが小出しに纏めてあり、章末の練習課題(主に格変化の練習や簡単な翻訳)には最初の問題にだけ答えが付き以下同様となるが、残りも基本的にその章で出てきた単語ばかりなので、時間をかければ当然分かるようになっている。本のサイズが大きくないのも、いつも文庫などを入れて持ち歩いている手提げカバンに放り込むのに丁度いい。僕が本書を読み始めた理由はコレ。『古典ラテン語文典』や “Wheelock’s Latin” もチェックしているが、重く嵩張るので持ち運びたくないのである。(後者は後日、kindle版が212円だったので購入した。読むことはあるのだろうか。)
本書の欠点は、文法の解説が簡素なので一冊目の教科書としてはお勧めできないのと、値段が高いこと。しかし、本書を候補に入れるような人はラテン語が既に気に入っている筈だし、そもそも大学書林の本を買おうという物好きは値段を気にしないのである。本書を購入した同日、語学書コーナーで新しい物好きの興味を引く本が出ているのを見つけたのでここで書名だけ紹介しておきたい。それは『スロヴェニア語文法』。チラッと見たところかなりしっかりした文法書で、浮気しそうになる。
(追記)新しい項を立てて書く程の事でもないので、ここに追加。少し前にもチラッと紹介したAudibleタイトル “How Dead LAnguages Work”, 古典ギリシャ語とラテン語を終わって現在は古英語・ゲルマン語の章を聴いているところだが、予想した通り内容がかなり詳細なので、僕には断片的にしか分からない。そんな中で、成る程、と納得した部分を紹介しておきたい。英語(比較対象として取り上げられていたので)では個別の単語や語順が担当する文法要素の一部をラテン語では語尾変化(格や動詞の人称)が担うので、ラテン語の方が文の構成が自由かつ簡潔であり、英語に翻訳した場合は一般的に単語数が増える、というのが通常の認識なのだが、単語数ではなくて音節で比較した場合は英語の方が短くなる、という話があった。単語当たりの音節数は英語の方が短い傾向にある(もちろんラテン語由来の単語は例外)。また、ラテン語の語順に関しても、文脈において何を強調するかに影響するので、それ程は自由ではないというはなし。
なんとなく想像するのだけれど、歴史的経緯は考えないとして、昔は書記・伝達のコストが高かったから単語数削減の方向に文法要素が変化した、あるいはそういう言語が公用語・記述語として重宝されたのかもしれない。それらのコストが問題ではなくなる近代以降では、習得のしやすさの方が共通語として重視されるのだろう。ラテン語が学術分野の共通語ではなくなった背景には、そういう流れがあったのかもしれない。よく知らないが。