プロジェクト・ヘイル・メアリー
面白くて一気読み。本書の帯に書いてあることに毛が生えた程度だけ紹介すると、時代は現在、太陽の放出エネルギーが次第に減少していることが分かった。気候は氷河期(の強烈なやつ)へと向かいつつあり、人類が最善の手を尽くしたとしても全人口の半減期は19年と予測される。同様に、太陽系の近傍にある恒星の光度も減少しつつあることが判明する。研究者たちはその原因と思われる「モノ」を探り当てるのだが、この原因の影響下にある恒星系の内で、ただ一つの星だけは光度の減少が見られなかった。そこに人類を救う解決策が見つかると信じて、全政府は総力を結集して宇宙船を建造し、調査隊を送り込むことにする。目的地まで数光年離れているが、「モノ」から膨大なエネルギーが取り出せるので光速近くの航行が可能となり、片道数年しかかからないのだった。
さて数年の休眠から目覚めると、科学者として搭乗した主人公は宇宙船に一人きりで、同行者の二人は休眠過程が上手く行かずにミイラ化している、という場面からお話が始まる。主人公は短期的な記憶も失っており、科学者として身に染み付いた思考法を駆使して様々な事柄に対処し、その度に少しづつ記憶を取り戻していく。上記の内容とか、自身が搭乗することになった経緯とか。そうして目的の星系にいよいよ近づいたある日、宇宙船の直ぐ傍に別の宇宙船が在ることを発見する。「人」工物から明らかに異質なその宇宙船に乗っていたのは、まるで鉱物でできた蟹か蜘蛛の様な、5軸対称の、…。帯にも書いてあるので明かしてしまうが、「ファーストコンタクト」である。この辺りで上巻の約半分くらい。そこからの展開、異文明間交流(「彼」とのやり取り)はすごく面白い。その場面を想像するとニヤついてしまい、つい色々と書きたくなる。
下巻に入るとトラブルが発生したりでやや退屈になるのだが、ネットのレビューには上巻が退屈で下巻は一気読みというのも有ったので読む人の好みによる。映画化が現在進行中と聞いており、とても楽しみである。なんとなく頭の中で想像が出来ている「彼」はどのように描かれるのだろうか。
本書は先日書店でふと気が付いて手にし、増える一方の積読本に優先して読んでしまった。同著者の『火星の人』(映画のタイトルは何だっけ?)が好きなら本書もお勧めだが、上下巻合わせると4千円もするのがネックである。なお、趣味で今年に読んだ書籍全般の中で、再読書を含めずに、最も楽しんだのは『しっかり学ぶ初級ラテン語』、追走は『ヘビ大図鑑 ナミヘビ上科、他編』と『世界は関係でできている』でした。続く第3集団に本書は入るかな。