ハヤブサを盗んだ男
中々の力作ノンフィクション。イギリスの空港で、とある男の不審な行動が警備員の目に留まった。空港ラウンジのシャワールームを数十分に渡って独占したにも関わらず、水を使用した形跡が無かったのである。この男を拘束して所持品を確認してみると、マダラ模様の卵を複数隠し持っていた。何らかの野生鳥類の卵の違法所持と見て取った警備員は、本書の主人公の一人である野生動物保護官(だったかな?野生動物の違法取扱いを担当する警察官)に連絡し、スコットランド(これもうろ覚え)で繁殖するハヤブサ類の卵である事が判明する。卵の運搬の手慣れた様子に男が常習犯であることを確信した保護官は、男の身辺を調査する。こうして本書の中心人物である「ハヤブサ泥棒」が明るみに出る。
もしアマゾン等で粗筋を読んで面白そうだから購入してみようと思ったなら、書店で本書を一度手に取ってみて、冒頭箇所を少し立ち読みする事を勧める。というのも、この手のやや軽めの海外ノンフィクションでよくある文体だと思うのだが、話の筋が散漫になりがちだから。これは本自体の良し悪しではなくて、慣れの問題である。僕自身もあまり集中できず、かなり疎かに読んでしまった。決して安い本ではないので、少し勿体無く思う。
『我と汝』は迫力のある思想書である。第三篇の「永遠の<なんじ>」から、その前辺りからかな、記述内容が良く把握できなくなってきたので詳細は控えるが、神と人間の関係についてユダヤ人の立場から(キリスト教徒の立場から?)主張した本である。冒頭から引き込まれる文章が続く。
「ひとは世界にたいして二つのことなった態度をとる。それにもとづいて世界は二つとなる。
ひとの態度は、そのひとが語る根源語の二つのことなった性質にもとづいて、二つとなる。
根源語は孤立した語ではない。複合的な語である。
根源語の一つは<われ>ー<なんじ>であり、他は<われ>ー<それ>である。」
主張内容に解説が付くわけでもなく、著者にとっての事実が述べられるだけなので、僕のように神学的な考察の経験を欠く人間にとっては中々難しい内容であった。それでも妙に気になって読み進めてしまったのは、本書が詩のようなものだからである。
さて、今月の岩波と中公新書、8月予定のちくま新書と学芸文庫、9月の講談社学術文庫に読みたい本が目白押しで、とても全てを消化しきれそうにない。今月の目玉は何と言っても『サンスクリット入門』。未だチラリとも読んでいないけど、新書でこうした内容が読めるのは本当に有難い。来月のちくま学芸文庫で特に気になっているのは『師弟のまじわり』と『徳の起源』。後者の著者はマット・リドレー、彼の著作を読むのは久しぶり(四半世紀ぶりくらい?)なので今から楽しみである。因みにその本自体は結構前(これも四半世紀程度前)の出版である。Audibleでも出ているのは知っていたけど、未聴のままなのは他に優先したいものが沢山あるから。たしか朗読も気に入らなかったような?