「失われた時を求めて」の完読を求めて

本書はたぶん出版からそう間を置かずにKindle版を買ったのだが、その少し前に翻訳が完結した岩波文庫版を既に読んでしまっており、結局手つかずのまま今まで忘れていた。このあいだ、Kindle端末を購入したとき、未読で気になっていた本をいくつかまとめてダウンロードした。その中の一冊であった本書を、先日ふと思い立って読み始めたところ、結局最後まで読み通してしまった。”一気に”と言うペースではなく、ダラダラとではあるが。例えば原作の冒頭で読者を悩ませる(たぶん)、意味があるのかないのかわからない長々とした文章、その奥に潜むプルーストの意図を、本書は鮮やかに読み解いてくれる。そうした読解の明快さが面白い。
有名な原作に興味はあるけれど長さに尻込みしている人、あるいは途中で挫折した人。そういう場合は、本書から入るのが吉である。本書分の500ページ近い遠回りにはなるが、最終的には完読への近道になるはず。それに、本書を読んで原作が思ったような小説ではないことが分かれば、その時点で「原作を読みたい」という無駄な憧れをきっぱり切り捨てられる。僕自身はと言うと、もう一度読んでみたい気持ちになった。どうせなら原著で読みたいところだが、フランス語力がかなり未熟なのでどうしたものか。

今、最も楽しんで読んでいるのは『魔の山』。週末と休日だけのペースで、ミスドで一か月余り読み進めてきたが、まだ全体の5%程度に過ぎない。この調子だと、完読までに2年かかる計算になる。なお、著者の短編を2編読み終えて、彼の文体に少しずつ馴染んできたように思う。加えて、Kindle端末内臓(かな?)の簡易辞書のお陰で読み進むペースが少し速くなったと感じる。ただこの簡易辞書、正直あまり頼りにならない。なのでアプリ版の『アクセス独和辞典』と『独和大辞典』を併用中。特に前者は例文の量が程よく、手放せないくらい気に入っている。後者は専ら前者の補助として使用。同じアプリでも、イタリア語辞書(小学館『伊和・和伊 中辞典』)は最近あまり使っていない。一項目の情報量が多く、ぱっと見で全体像を把握できないので、使い勝手としては少し不便かもしれない。だたし、活用形をチェックできるのは初心者として有難いと思う。
以上に加えて、読みたいものがスペイン語の書籍に多いので、少しずつ思い出しておきたいと思いつつも、ついデンマーク語に手を出してしまう。以前、発音と聴き取りの余りの難しさに挫折した言語であり、今回もどれだけ続けるか分からない。そもそも読みたい本があるわけでもなく、手が回らなくなったら真っ先に止めるだろう。