スペイン語の世界

映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ』が良かったので、もう一度観てきた。世界の何処かでそのままロールプレイされていそうな癖の有るキャラクターの活躍が楽しい。一度目の観賞ではドルイドの冷めた性格と容姿が可愛らしくて仕草を目で追っていたけど、今回は女戦士に惚れた。ハーフリング(小人)の分かれた恋人に「僕の優しいホルガ(女戦士の名前)」と送り出された場面が記憶に残る。登場人物全員分のキャラクターシートを見てみたいものである。

以下は最近読んだ、または読んでいる本など。先ずは『スペイン語の世界』。本書は4要素: スペイン語の歴史、現在の使用状況、幾つかの単語の語源、スペイン語文学の紹介から構成され、僕が特に楽しんだのは後半の二つ。文学の章では小説だけでなく詩や哲学書も紹介されており、スペイン語文芸を広く一望できるので、何だかもっと勉強したい(練習したい)気持ちが湧き上がってくる。

最も興味深く読んだのが語源の箇所。ほんの一例として、「nada (何も~ない)、nadie(誰も~ない)」。英語の no の様に “n” で始まる否定語(no, nunca, ni, not, neither など)と同系列だと思っていたが、DNAは全く異なると言うのだから面白い。スペイン語の基礎的な単語の多くはラテン語に由来し、これらの2語も例外ではなく、前者はラテン語動詞 NASCI(生まれる)の過去分詞女性形 NATAに、後者は過去分詞男性形 NATUS に起源を持つ。RES NATA (生じたこと)、HOMO NATUS(生まれた人)という語句を慣用的に否定文で用いることが多くなり、過去分詞部分だけが残って否定の意味として認識されるようになったそう。これらに含まれる “na” は、nacer(生まれる)、 natural(自然) 、nacion(国民国家) と同じ遺伝子なのであった。一方、これらの意味を持つラテン語本来の単語 NIHIL と NEMO は消滅した(?)。ラテン語を知っていればより楽しい。ラテン語からスペイン語への音韻変化則が巻末に載せられている。

もっと知りたくなって購入したのが『スペイン語の語源』。これを書くときに気付いたが、表題書と同著者である。期待大、でも未読。

スペイン語文法関連で次に読む本として入手したのが『中級スペイン語文法』で、近所の書店には置いてなかったためネット購入したのだが、実際に手にしてみると寝ながら読むには少しばかりサイズと重量が過ぎる本である。取り合えず、動詞の変化形が全然身についていないことは分かっているので、『極める! スペイン語の動詞ドリル』で練習しようかな。

『まんぷくモンゴル!』は大使館の料理人がモンゴルで経験した食生活を書いたエッセイで、日本とは全く異なる食文化に驚く。海産物を多く利用する農耕民の食文化とは対極にあるのではなかろうか。但し、内容を支える文章の方はイマイチで、飽きる。

色々あって未だ余り読めていないけど、今現在最も楽しみに読んでいる本が『文明交錯』。歴史の “If” を描いた小説である。話は10世紀頃の北欧、アイスランドから始まる。色々あって故郷から逃亡した一団が新天地のアメリカ大陸に渡り、海岸線を南下して中米から南米に辿り着く。一団は馬と鉄器(製鉄と鍛冶の技術も併せて)、天然痘の病原菌を同時に運んでおり、彼らと接触した現地民はそれ迄見たこともない馬という動物に驚きつつ、接触後一定期間後には必ず疫病が広まって街や集落は壊滅するのだった。それでも暫く後には疫病を生き延びた人たちによって街は再興する。こうして移民たちは現地民に吸収され、彼らの痕跡が途絶える。そして数世紀後にコロンブスたちがやって来るのだが、というお話。これは面白い。本書の感想などは読後にまた。