マーブル館殺人事件

今年に読んだ一冊目がこれ。作家の死亡により終結した人気ミステリー・シリーズを、若手作家が引き継ぐ形で再開することになるが、その新作原稿には、彼自身の一族の暗い秘密と、祖母の死の真相が織り込まれていた。そこから発生する事件に担当編集者も巻き込まれることになる。ミステリー小説の中でミステリー小説を読まされる、という入れ子構造を持った作品である。

今年(2025)のミステリー小説ランキングで国外編第一位(だったかな?)なのが納得行くものの、個人的に難点も幾つかある。先ず、これは微々たる点ではあるのだが、作中作の登場人物と関係性が若手作家周辺の関係人物と類似していて、これは誰でどういう立場なんだっけ、と何度も家系図を見返すことになった。電子書籍で読む向きには、この操作がやや煩わしく感じられるかもしれないので、留意しておきたい。

次に、全体の分量の約三分の一(体感ではそれほどを占める)に及ぶ作中作についてだが、語り口はきわめてあっさりしており、正直なところ面白みに欠ける。作中の「現実」パートとの差別化を図ろうとしたことは察せられるのだが。そのあたりが影響しているのか、作品全体としても「味わい」に欠ける印象を抱いた。料理で例えるなら、出汁が利かず、素材の輪郭だけが残っているような味気なさを覚える。そもそもプロット重視のミステリーとはこんなものなのかも知れない。

最後に、世間的に評価の高い第一作目『カササギ殺人事件』のネタバレが含まれているので、そちらも気になっている向きは注意が必要である。僕も本作が気に入れば遡って読もうかと考えていたのだが、結局のところネタバレの有無は関係なく、今後この作者を読むことは恐らくないだろう。目立った粗は無いものの、好きになる加点要素があるわけでもなく、個人的な満足度は同じ翻訳ミステリーの「ワシントン・ポー」シリーズより一段低い。5点満点中の3点。