グレイラットの殺人
先々週末に第五巻目の『ボタニストの殺人』から読み出したワシントン・ポー捜査官のシリーズ、結局残りの第四巻と第一巻も読んだ。第四巻の『グレイラットの殺人』は、本来第2作目に予定されたものらしく、シリーズを軌道に乗せようという意欲の伝わってくる力作だった。殺人事件の背後にある事件は第三巻目と並びシリーズ中で最もスケールが大きく、前作では連絡を取っただけのFBI捜査官も今回はポーに同行する。ポーの独断であろう最後の判断は賛否の分かれるところだと思うが、シリーズを通して描写される彼の性格をよく反映している。ストーリーは相変わらず非常に分かり易く、まるで大通りに沿って歩いている様で、迷うことがない。これは決して腐しているのではなく、賞賛しているつもり。
最後が第一作目の『ストーンサークルの殺人』。後作品と比べると、読書感に滑らかさがやや欠ける印象を受けた。気になる程ではなかったので別段注目しなかったのだが、章間の接続の仕方が違ったりしたのかな?工事区間の有る大通りという印象。シリーズ第一作目なので、人物描写はより濃く色付けされている(と感じた)。時系列的にも、ポーはより直感的で不正な事が許せず、同僚のティリーはより子供っぽくて世間知らずに描かれる。続く作品のために彼ら自身と彼らの関係性を導入するための巻である。
本書を続巻の後に読む難点が一つ;後作の情報を合わせると、終盤を待たずして犯人の目星が消去法的に付いてしまう。もちろん動機は不鮮明なままだし、より正確に書くとその人物は犯人であるか或いは、という二つある可能性の一つに過ぎないのだけど、それでも7、80%程度の可能性のネタバレが嫌な人は要注意である。シリーズ作品を僕の好みで順位付けするなら、トップから順に第二巻目『ブラックサマーの殺人』、第四巻目『グレイラットの殺人』、第五巻目『ボタニストの殺人』、第一巻目『ストーンサークルの殺人』、第三巻目『キュレーターの殺人』。何もアマゾン風の採点なら4点以上。ぜひ映画化されて欲しい。映像映えするのは第一巻目と第四巻目だけど、僕の好きなタイプになりそうなのは第五巻目かな。
「この漫画がすごい」を参考に、久々に漫画を一気読みした。なんとなく絵柄で選んだ『ふつうの軽音楽部』。他の本のついでに第一巻だけ紙媒体で買って帰り、残りの3巻はKindle版で。少年(?)漫画の定番だけど、冴えない主人公が次第に認められて行く様はやっぱり気持ちが良い。オトコ編第一位の漫画は、レビューに「泣ける」という言葉が幾つか並んでいるのを見てしまい、躊躇している。