時の子供たち(上)

久しぶりのワクワクするSF小説で、ページを捲る手が止まらない。睡眠時間を気にしない頃だったら多分一気に読んでしまっただろう。これを書く時点ではまだ上巻を読み終わったところで、この先どう話が進むのかは分からないけれど、下巻は出張の移動時に一気に読みたいような、ここで止めても構わないような(他にもっと読みたいものがあるので)、そんな気分である。

何時の頃だったか覚えていないけれど今より未来、人類は自分達が搾取し尽くした地球の将来を見限って他惑星に活路を求め出し、有望な惑星にテラフォーミングを施して新たな居住地を作ろうと計画していた。同時に、どういう経緯か読み飛ばしてしまって覚えてないのだけれど、テラフォーミングした惑星にサルを代表とする地球生物とそれらの知的進化を促進させるウイルスを投入し、新たな人類?を創造する計画も進行していた。ウイルスの投入後、いよいよ進化のターゲットとなるサルたちを投下しようとする瞬間、この計画が現存人類への冒涜とする過激反対派によって宇宙船は破壊される。知性促進研究の中心研究者ただ一名のみが軌道衛星に逃れて生き延び、自身の人格をコピーしたAIと共にこの星の知性進化を、冷凍睡眠状態で何千年も眠りつつ見守ることになる。ここまでが導入部。

さて、対象の筈だった宿主が居なくなったウイルスは、想定外の生物である蜘蛛や蟻(これらも地球から持ち込まれた生物である、多分)に知性促進の効果を発揮していた。どういう仕組みか不明だけれど蜘蛛の或る個体が獲得した知識(言語や科学知識など)は遺伝子に組みこまれて次世代に受け継がれる、という遺伝形式と体の大型化である。蟻の知性形態はちょっと面白いけど省略。これにより知性進化が加速し、たった数千年で電磁波を使って、軌道衛星が発する数学的信号に返信する。上巻はここで終わり。この話と並行して、僅かに生き残った人類が新天地を求めて宇宙を旅し、この星に干渉しようとするところが描かれ、未だあまり接点の無いこの二つのお話の流れが下巻の何処かで一本に統合するのだろうと思われる。

こちらはずっと前に読書会で紹介した(かもしれない)ラテンアメリカ小説の入門本。ボルヘスと『百年の孤独』くらいしか読んだことがなくてずっと気になっているジャンルではあるけれど、何となくスルーし続けてここまで来てしまった。というのも「魔術的リアリズム」という言葉に魅力を感じないからである。難しいことは考えずに何か一冊読んでみようかなと思って本書を再読してみた次第であった。先ずは何を読もうかと迷いながら読んだのが思いのほか楽しかったので一寸だけ紹介した。一番気になっているのはコルタサルの『石蹴り』だけど、絶版なうえ古本も高い。やっぱりスペイン語をやらないと駄目なのかも。