年内に駆け込みで読み終えた本など
今年は例年より早く休暇に入ったため、すでにかなり休んだ気分でいるが、まだ年内である。その間に気になっていた本を数冊、駆け込みで読み終えることができた。

先ずは『魔の山』上巻。ペースから考えて年内はまず無理だろうと思っていたが、上巻最後の章「ワルプルギスの夜」が比較的読み易く、また面白かったので、残りを昨日一気に読み切った。主人公がショーシャ婦人と片言のフランス語で会話を続けたことも、読みやすかった大きな要因である。これ一冊におよそ半年。時間はかかったが、もともと一年ほどかけるつもりで読み始めたのだから、思っていたよりも――。下巻も楽しみである。
次は『ロシヤ語四週間』。語学書なので読書と言ってよいのか迷うところだが、実に中身の濃い時間だった。もう一度くらいは読み返す必要がありそうだ。
三冊目は『ロシア共産主義の歴史と意味』。これは中々難しく、知識も欠けるので腑に落ちない部分も少なくない。それでも、普段の自分の守備範囲を外れたテーマだけに、なかなか興味深い読書だった。端的に言えば、ロシア共産主義を、古いロシアの伝統的・メシア的理念の変形として捉え直した本である。

四冊目は『百年の時効』。2026年度版「このミステリー・・・」的ランキングの上位(一位だったかな?)に入っていた本である。50年前に起こった一家惨殺事件の関係者と思しき人物が現代になって発見され、その手がかりを元に過去の事件を紐解いていく、というミステリー小説。複数の事件の情報が絡み合うため、途中中程で一週間ほど寝かしておいたら軽く混乱してしまった。同じく高位にランクインした『失われた貌』よりも数段好みである。満足度を5点満点で表すなら4点。

最後に『ケルトとは何か』。現在、ケルト文化として広く認識されている多くの要素は、近代ヨーロッパにおけるケルト・ブーム(というものがあったそうな)で創作、あるいは誇張されたものだそうな。それでは古来の、より純粋な「ケルト性」はどこに残っているかと言うと、それは言語(ケルト語派:現在ではイギリス周辺の島嶼部と大陸側のごく一部にしか残っていない)である、という話である。個人的に前から気になっていた「ケルト」と「ガリア」の違いについても、本書で解説されている。すなわち、ガリアはケルトの一部である、と。
さて、今年最も面白かった読書は何だろうかと振り返ると、
「今年出版された本」というカテゴリーなら『ジェイムズ』
「読書体験」という意味ならば、一連のトーマス・マン作品(『トニオ・クレーガー』『ベニスに死す』『魔の山(上巻)』)
だろう。多分。

