吾妻鏡-鎌倉幕府「正史」の虚実

鎌倉時代の正史とされる『吾妻鏡』の創作箇所を、他の資料と比較しつつ指摘していく、という本書。「歴史とは、客観的事実ではない。・・・(客観的事実としての)過去は叙述されて初めて歴史となる。・・・叙述主体の現在から過去が振り返られ、事象が系列化され意味づけられる・・・」と著者が終章で述べるように、歴史はそれを語る者の意図で脚色されることは避けられない点が繰り返し指摘される。意図とは視点と言い直してもいいが、時には創作・改竄・消去(省筆)など著述者の行き過ぎた主張が混じることもあり、これ等のフィクションを洗い出し公にすることは、歴史研究に期待されることの一つであろう。さて、鎌倉時代末期に成立された吾妻鏡の意図とは、もちろん頼朝の政道を受け継いだ北条氏の正当性である。本書は新書として、つまり手軽に専門的な内容の一端を垣間見ることができるという意味で、理想的な内容であった。ただし、同じような記述内容が続くので、半ばで飽きたのも事実である。

『奄美で・・・』は奄美にある東大の研究所に40年間勤務した研究者の、ハブ研究と島生活にまつわるエッセイ。ハブへの印象が少し変わった。僕自身の経験は西表でヒメハブ(だっけ?本ハブじゃないやつ)を数回見かけたのみである。ハブに関心があるならどうぞ、くらいの内容。

発売日になっても書店で見かけなかった『ラテン広文典』だが、1週間ほど前にようやく購入することができた。中身は旧版と変わらない。一寸づつ再読中。良い本である。