ロシヤ語四週間

『魔の山』と『百年の孤独』の原著を一寸づつ読み進めていることは以前にも報告した。後者は週当たり平均2時間前後、前者はボリュームがボリュームなので週当たり平均5時間程度づつ、両方とも約半年ほど掛けてやっと半分に届こうかという進捗具合で、超遅読である。遅いなりに精読できていれば嬉しいところだけど、意味の分からない箇所が結構残ったりして、だただた遅いだけ。特に『魔の山』は文章構造も用語も一筋縄ではいかなくて仕方が無いのだ。

これ迄の読書は専ら乱読・多読的であった。その(意識する、しないは別にして)ある程度は量を稼ぎたいという精神的な負荷から解放された「遅読」の心地よさが癖になりつつある。時事的な情報重視のものではなく古典なので、そもそも急ぐ必要性が全くない。決して読み急がず、「今日は此処まで読みたい」などとは思わないのがコツで、文の途中で中断しても構わないのである。

他に遅読したい本は何が有るだろうと自分の趣味を顧みてみると、スペイン語文学に山ほど残っている他に、ロシア文学がどうしても外せない。19世紀の(黄金期?の)著作ならばKindle版が安く入手できるほか、紙版もある書店にネット注文できて、僕が知る限り仏語、西語、独語に次いで入手が容易。因みに伊語の場合は、もう少し限定的になるようである。そんな訳で、ロシア語を小説が読める程度までやっておこうと思った。これが大体先月の頭くらい。

それ以来、ほぼ毎朝5時から6時過ぎ迄、マクドナルドでコーヒー1杯と共に読み進めていたのが表題書『ロシヤ語四週間』である。眺めるだけでは中々頭に入らないので、出てくる単語やフレーズをノートに繰返し殴り書きしながら読んでいると、頭の中の雑念が消えて妙にスッキリした気分になれる。この時間帯、以前は運動に充てていたのだけど、こっちの方が気持ち良くて自然と置き換わった次第である。

表題書は1961年の発売で、例文はソ連時代を反映した相当古い情報で占められるが、内容そのものは非常に分かり易く、曖昧な点が無く情報密度も濃いので、語学書の中でも僕が最も気に入った一冊となった。本書に比するほど良いと思った語学書は、パッと思い付く中ではベレ出版の『しっかり学ぶ初級ラテン語』くらい。ただ、僕は以前にもロシア語を齧ったことがある上での(名詞・形容詞の活用を覚えきらなかったので入り口止まり)この評価であって、アルファベットから覚えるような全くの初心者には少し敷居が高いかもしれない。兎に角、良い本なのだ。

このシリーズの常で、「四週間」と題されていても普通の人は4週間では終了できない。そうであって欲しい。本書も第3週に入ったあたりから段々難しくなっていき、「1日分」が僕のペースだと2,3日掛かる分量に増えていく。これを書く時点で第4週目の4日目に入ったところであるが、残りの4日分を年内に終えることは先ず無理だろう。そうして本書を終えたとして、ロシア文学を生で読める気が今のところ全くしない。活用形の他に、もう一回り困難な要素(個人的に)が存在するのである。そちらを補強する本(これも古い出版)も既に購入済み。

表題書に続いて、6時過ぎから7時前まで読んでいた(読んでいる)ものがある。興味範囲から多少外れても良いのでとにかく気楽には読めないもの、だけど(斜め読みせずに)きちんと読めば文の意味は読み取れるもの、そんな本を無心で読みたくなり、最初の内に読んでいたのが、丁度発売したばかりの『ヘーゲル読解入門(上)』。対して理解していないので内容の方は割愛する。個々の文の意味は分かるのだけど、さて何が書いてあったかと振り返ってみると良く分からない。

これを半分程度読んだあたりで見つけたのが上に表紙を載せた『ロシア共産主義の歴史と意味』。折角なのでロシア関連の本を読んでみようと思い乗り換えることにする。帝政から社会主義革命へと至るロシア人民の精神構造および思想体系の展開を解説したものであるが、そもそも前提知識に欠けるので中々難しい。これを書く時点で半分程度を読んだのみ。

7時からは、時間に余裕がある日は、朝食も兼ねて『魔の山』を読みにミスドへと流れていく。色々試した末、オールドファッション系のどれか1個が定番となった。さて、「今年の漢字」は「熊」に決まったと聞いた。僕個人で選ぶなら「」か「」だろう。