古代マケドニア全史 フィリッポスとアレクサンドロスの王国 他

表題書は読み終えるまで非常に時間がかかった。と言うのも、読み始めて直ぐに、『世界の終わりの最後の殺人』等のミステリーや『オスマン帝国全史』に脱線したから。本書がつまらないと言う訳では決してなく、結構興味を引かれる内容だからこそ、後回しにしても構わないと思ったのであった。なお、これを書く手元に本書を置いておらず、もの凄いうろ覚え状態である。
内容の方であるが、記述範囲は紀元前7世紀とされる建国からアレクサンドロス3世(大王)、付け足しでその後の混乱まで。ただし前4世紀前半(?)までの歴史はギリシャの歴史家(ヘロドトスやトゥキディデス)の著書に数行程度が記されるのみで、専ら考古学的資料からの推測に拠る。またアレクサンドロス3世の業績は数多くの他書で語り尽くされているので、本書では概要のみが手短に要約される。中核となるのはフィリッポス2世と彼の2世代(?)くらい前までである。
さて、読んでいる最中は色々と頭をよぎった事があったのだが、少し時間を置いてしまうと何も思い出せなくて困った。フィリッポス2世の記述箇所では、帯にも描かれている漫画『ヒストリエ』の登場人物や場面をつい探してしまう。主人公のエウメネスは1箇所で言及されたのみだったかな(?)。何か思い出した事があれば後に追記するかも知れないし、このまま放置するかも知れない。

『白薔薇殺人事件』は「本屋大賞2025」の翻訳部門第2位と言うことで読んでみた。一位の『フォース・ウィング』の方が面白そうだが、ロマンス要素があるとのことで躊躇している。こういうのこそAudibleで良いだろうと思いサイトで検索してみると、既に購入済み。放置していた理由は朗読の声が耳障りだからであった。日本語小説のランクインでは『禁忌の子』と『人魚が逃げた』が気になっているが、今直ぐと言う程ではない。
その『白薔薇・・・』であるが、書き出しは軽快すぎて少し戸惑うものの、一旦慣れると読みやすさだけが残る。相続に関する会合のために大叔母の屋敷を訪れた主人公の女性とその一行は、大叔母が自室で死亡しているのを発見する。遺書には自分が殺された場合、主人公と、もう一人の遺産相続人候補である大叔母の義理の甥(だったかな?)の二人のうち、犯人を先に突き止めた方に全財産を譲ると指示されていた。大叔母は彼女が16歳の時に得た占いにより、いつか殺害されることを非常に恐れていたのだった。物語は主人公による捜査場面と、日記によって明らかになっていく大叔母の青春時代の出来事とが並行して語られていく。
宣伝文句には「犯人当てミステリの大傑作」とあるが、これには2箇所異論がある。先ず「犯人当て」部分、読者が論理的に犯人を当てることができるためには情報が足りない(読み飛ばしてしまっただけかも知れないけど)。何より本書から受け取る印象は、面白さのベクトルが「犯人当て」の方には強くは向いていないと思われる。そして「大傑作」の部分。佳作か、せいぜい傑作が良いところ。個人的に5点満点で採点するなら4点だが、端数をつけても良いなら3.5点くらい。

以前に少し紹介した『名作短編で学ぶイタリア語』、その時は未読であった最後の話『苦悶の家』(ルイジ・ピランデッロ)も凄く良い短編だった。そこで原著を検索してみると、収録著者の中でも(唯一?)彼のものはかなり安く手に入るようなので、試しに購入してみた。でもその前に、上に載せた『ウンベルト・エーコの「いいなづけ」』を読むことにする。
本書もいつ入手したか分からない本うちの一つである。トスカーナ語を基礎とする近代イタリア標準語の完成に寄与した作家の一人、アレッサンドロ・マンゾーニの国民的長編小説『いいなづけ』、これをウンベルト・エーコが子供向けに平易な語り口で、約5%に要約したというものである。この手の小説で一般的に使用される遠過去が使用されず、代わりに半過去や大過去等が用いられるのが特徴。イタリア語文章の読解レベル的には、『名作短編で学ぶイタリア語』の中盤以降よりも簡単ではあるが、ドイツ語で現在読もうとしている(「読んでいる」とはなかなか良い辛い)ものがそれ自体で十分手強いので、もう暫く自分を甘やかすことにした。例によって主に週末・休日のみなので、ピランデッロ(或いは他の作家)は連休辺りからかな。