さかさ星

年休を消化して帰省した際に読んだ本が数冊。骨のある本を読む気力は無かったので、一旦流れに乗ったら受動的に読み続けられるようなものを選ぶ。『さかさ星』は旧家の屋敷で起こった一家惨殺事件の謎に、遠縁の青年と霊能力者が挑むという内容。屋敷には様々な呪物が配置されており、その内のどれかが事件の関係するという。呪いを中核とする、中々楽しいミステリーである。中盤までは。以降も、それまでに付いた勢いは最後まで読ませるに十分であった。5点満点中の3点。その勢いのまま、前作である短編集へと進んだ。

『秋雨物語』は4篇のホラー短編集。『さかさ星』程の勢いには欠けるが、何れもそこそこ以上に楽しい。4点。第2話目の『フーグ』には、『さかさ星』で活躍したゴブリン顔の霊能力者が、この段階では未だ無名の端役で登場する。

『比ぶ者なき』は藤原不比等の活躍(暗躍?)を描いた時代小説。持統天皇の家系の下で権力を掌握するため、天皇家の「万世一系」を新たに唱え、その裏付けとなる神話「日本書紀」を創作する。さらに蘇我馬子の大き過ぎる業績を削ぐ為に「聖徳太子」という偶像を仕立てる。何となくだけど僕自身も、天武天皇以前と持統天皇以降で国の在り方が変わった様な印象を持っていたので、そのようなことが本当に有ったのかもしれないなあと、素直に小説世界に入り込めた。物語の大半は平明な会話文で進行するため、中盤からは拾い読みで済ませる。それでも話の筋についていけるのは、著者の文章や構成が上手いからなのだろう。ただ、あまりにラノベ的なので好みでない。2点。続編2冊で後の世代が語られるそうだが、たぶん読まないと思う。

他に、宇喜田直家を描いた『涅槃』上巻も読んだ。十分引き込まれるお話ではあるが、年々歴史小説が肌に合わなくなってきた気がする。下巻は多分パス;次に小説を読むならSFが良い。そして休暇中に最も面白く読んだ本は『はじめてのロシア語』だった。これを読むのは数年ぶりの3度目かな?