古書店巡りは夫婦で

何度も読み返す本は何種類かに分類できる。先ず、初読時のブッ飛ぶような衝撃が忘れられず、追体験したくなるもの。僕にとっては”Da Vinchi Code”や『ハイペリオン』を始めとするSF、そしてよくできた一般向け科学書がここに入る。次に、一読では理解が及ばなかったが面白い、或いは十分な理解が必要と感じるもの。井筒俊彦の著作(『意味と本質』など)はここだ。そして、たとえ初読時の衝撃はそれ程でもなくても、何度目でも面白いと思えるもの。いわゆる波長が合う本と言えるだろうか。何度でも読む本はこのカテゴリーが一番多い。漫画でも僕が手元に残すのはこの類ばかりだ。(本を再読する理由は他にもあるし、上述の各要素が排他的というわけでもない。要はいい加減な分類なので、突っ込まないで頂きたい。) 

この「波長が合う」本は沢山あって、もう覚えていないものも多いと思う。というのも、この本を捲っていてふと『ヘリオット先生』を思い出した。これはAudibleにも入っていたので、今後暇が有れば紹介したい。表題の本はこの『ヘリオット先生』と同じハヤカワ・ノンフィクション文庫の一冊で、同類の本を探している時に手にした。

この本の面白さは宝探しの興奮と、他人が高価(で恐らくは無用)なものを衝動買いする様を安全圏から眺めることにある。話の発端は、本好きの夫婦が互いの誕生日(一週間違い)に、相手に勝るプレゼントを贈るという、一寸した競争心だ。設定金額の20ドル以内で、ナンシーは夫が愛読する『戦争と平和』の「綺麗な」(つまりハードカバーであり、綺麗な挿絵が入っており、文字が大きい)本を探しに書店を捜し歩くが、ペーパーバック又は設定額を大きく超えるものしかない。様々な書店と書店員を訪ね歩き、知人の老紳士から古書カタログ有益な情報を得る。そして悪魔の囁き。「君が今しているのは、素晴らしい冒険だよ。」

ナンシーは遂に10ドルで目当ての本を手に入れ、夫もこれを喜ぶのだが、これは更なる冒険の始まりに過ぎなかった。古書には版元や出版時期、版の違いや翻訳ものであれば訳者の違いなどに従い、もう本当に様々なバージョンが存在し、入手難度や金額が違ってくる。夫婦は古書に関する知識を深め、古書から稀覯本の世界へと踏み込み、ディケンズの『荒涼館』上下巻計700ドルを購入する。店を出て互いに一言、「あきれたな。」

その後も二人は益々知識を深めて行き、稀覯本オークションに参加したりする。この本に一貫するのは新たな世界に踏み込んでいき、知識を得て、世界が広がっていく様だ。面白くないはずがない。因みに続編『旅に出ても古書店めぐり (ハヤカワ文庫NF)』も出たが、表題本も続編も、どうやら古書店を探すしかないようだ。

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