ハクメイとミコチ

年明けに新刊が出る、8年目の第8巻

毎年明けに書店に買いに行く本・漫画と言えばこの『ハクメイとミコチ』が先ず挙がる。この八巻目も今年明け直ぐに買っておいたが、他に色々と優先するものが有り、読むのをすっかりと忘れていた。現実世界であれ非現実世界であれ、何気ない日常の一コマを描く漫画が好きで、ますむらひろしの『アタゴオル』シリーズと杉浦日向子の『百日紅』は完結して後も手放さずに取ってある数少ない漫画であり、それらと比べると少し趣が異なるこの漫画も、少なくとも完結までは取っておこうかなと思える漫画だ。主要な登場人物は外見がやや歪にデフォルメされ(人によっては可愛いと言うだろう)、身長約10センチであること以外はヒトと変わらない小人(?)と、ヒトと同等の知能と言語を持つ小動物たちだ。絵柄や主要小人に女性が多い点や少し気取った作風は恐らく作者の趣味だろう。慣れればとても面白い。これだけならここに書くつもりもなかったのだが、昨晩寝床で読んでいて幾つかの点が頭から離れなかった。以下、ここに書くことは僕の妄想である。あまり深く考えていない。僕の生物学の知識は古く、最新のものを知らないので間違いが多いかもしれない。

一点目は小人のサイズ。特に初期は小人の大きさが周りの動物たちと比較して測りづらかった。マイマイカブリやカブトムシに騎乗したりネズミと同じくらいの背丈であったり、身長が2センチから10センチまで定まらず、違和感がある。これは単に設定が固まっていなかっただけかもしれない。あるいは作者がそれらの動物を図鑑でしか見たことが無いのかもしれない。一方で、ずんぐりした体型や頭身の大きさ、手足の小ささはこのサイズなら自然であるようにも思う。体長が10倍も違うと、体を保持し、動かすための物理が大分変ってくる。ミジンコが水中をピンっピンっと飛び跳ねるように泳ぐのは、僕らにとってはサラサラな水が彼らにとってはそれだけ確りと「粘る」からだ。そして声。体長が僕らの10分の一未満なので、声は多分僕らより3オクターブから4オクターブ程度高いはずだ。僕らにはキンキン声に聞こえるだろう。

二点目は小人の生理。内容から小人は明らかに恒温動物なのだが、表紙絵からも明らかなように体毛が無い。これでは起きている間は余程食事を採らないと餓死するだろう。同サイズで体温保持の苦手な動物は起きている間は常時食べていないといけない。改めて見直すと食事描写は確かに多く、主要の二人は大食いである。寿命は同サイズの哺乳類から考えると、10年程度が上限だろうか。多数描写される子供たちは、その子供時代を2年程度で駆け抜けていることになる。老人は少ないので老化は遅いのかもしれない。以下余談。老化や老衰は淘汰圧を受けないので現れると言われる(僕が学生の時はそう習った)が、淘汰圧に掛かっているから起こっているんじゃないかと思う。言い換えれば、その修復機能が淘汰圧を受けて衰退した、或いは不十分なものしか獲得できなかった、かもしれない。生殖機能が終わった老個体が何時までも集団に残り、若い個体と同等に有限の資源を争えば出生率が落ち、その集団は減衰する。

三点目もサイズに関係するが、知能に関してである。脳の大きさと知能は関係しないと言われる。確かに、脳の大きい動物がヒトより賢いという報告は今のところない。だが小さくなると如何なのだろう。どの程度のサイズまで、今のヒトの知能を保ちつつ、小型化できるのだろうか。頭の大きさと知能には、ヒトの標準範囲内での傾向では、非常に弱い相関が有るという。小人のサイズなら、単純な推定で脳の重さはヒトの約1000分の一、ただ脳細胞の分布は良く知らないが2コンマ何次元だと思うので脳細胞数は100分の一未満か。その程度の神経細胞数でヒトと同じように思考し、言語を操れるかどうかは分からない。

空想事に何を気持ち悪いことを、と人は言ってはならない。作風によっては、臼がサルを退治してもまるで気にならない。非常に細かく書き込み、設定し、やや気取ったお話だからこそ細部が気になってしまうのだ。ヨウムのアレックスは4,5歳児程度の知能が有ったと言われるので、小人もその程度の知能は持っていてもそれ程不思議ではないだろうか。体長10センチと言っても想像しにくいが、コザクラインコ、ボタンインコ並みのサイズと言えば大きさの実感が沸く。ヨウムよりは二回りほど小さく、ある程度の声真似はできる。

小人と比べるサイズの動物でコザクラインコ、ボタンインコが頭に浮かんだのは、つい先日この本を読んでいたから。この類の絵で有り勝ちな「ママー」ではなくて、「かいぬしー」というところが気に入った。インコが好きな人は楽しく読めると思う。

また余談になるが、ヒトの脳の容量や結果としての知能は (もし人の範囲を超えて容量が増えると知能も上がれば、の話だが) 、生存競争の結果今在るレベルに落ち着いたと考えられる。より大きな脳を持つなら、出産方法を何とかするか、身体全体を大型化するかしかない。そして大きく高度な脳はより大量のエネルギーを必要とする。これらのペナルティーを補うだけの利益を、知能の増加分は短期間に生み出せないと、拡張競争に恐らく負ける。つまりヒトの知能レベルはその程度、ということかもしれない。僕らを発見した宇宙人は多分、「知能レベルたったの5か、ゴミめ」と言っている。

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