瀧夜叉姫 陰陽師絵草子(漫画)

僕の好きな漫画家、伊藤勢の新作が出ていたので紹介したい。氏の漫画は原作に独自のアレンジを加えるので原作ファンは賛否有ると思うが、その改変は漫画媒体の娯楽として成功していると思う。夢枕獏原作の『荒野に獣慟哭す』、田中芳樹原作の『天竺熱風録』、安田均原作の『モンスター・コレクション』はどれも非常に面白かった。最後に挙げた原作は小説ではなく、和製ファンタジー世界のTCG(トレーディング・カード・ゲーム. 詳しく知らないが、MTGの様なものだろうか)のデータ集であるらしい。『荒野に…』は原作小説も読んだが、それは漫画単行本の方が出版社の事情で数年間中断して、先の展開が気になって仕方なかったからであった。原作の方は小説として面白かった。それと漫画の面白さはまた別である。

氏の漫画に欠点を探すとすれば、どの作品にも「伊藤勢」節が濃厚に出ている点だろう。そして何処かで見たような登場人物がだいたい同じように活躍する。原作の展開を特徴づける味噌であったり主要な具材はそのままに、出汁と餅だけは実家流を踏襲して作ったお雑煮。原作とアレンジのバランスはそんな感じかもしれない。僕はこのアレンジが好きなので、大好物である。

さて、本作の原作『滝夜叉姫』は、あとがきによると、夢枕獏の『陰陽師』シリーズの一つのエピソードであるそうだ。ただし、登場人物はみな、「伊藤勢」流に再構築されている。舞台は天徳4年の京付近、安倍晴明は得業生として登場する。得業生とは大学(?)の成績優秀な特待生に相当する身分であるらしい。つまり晴明は未だ出世前。当時の日本は怨霊やら呪いやら怪奇が横行する妖しい時代であった。第一巻ではお話は始まったばかり。物語がこの先どう動くか楽しみである。

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