ゴガク百景

僕は「ゴガク」を趣味にしていると公言しているが、これには2,3の注釈が必要なようだ。まず、語学とは、言語学のように高尚なものではなく、外国語の勉強に過ぎない。次に、この語学を僕はたったの5,6年前、スポーツジムに通い始めた際に、運動の合間に何か読むものとして始めた。この点は今でも基本的に変わらない。つまり、経験がとても浅い。最後に、僕が本当に好きなのは語学そのものではない。

運動の合間に何か読みたいとして、単語集や簡単な文法書は最適だと思う。筋トレの合間だと精々1分、有酸素運動中だと頭に酸素が回ってないので、筋(すじ)や論理を追うものは頭に入って来ない。僕も初めは小説や小難しい書を持ち歩いていたが、直ぐに諦めて別のものを探した。そこで思い出したのがフランス語。大学時代に第二外国語で履修しており、そこそこ真面目に勉強したので、約15年ぶりではあったが適当な単語集を購入したところ結構覚えていた。そしてこれが嵌った。

より良い単語集・熟語集を求めて、数々の類書の果てに行き着いたのが上の『仏検3・4級必須単語集』。収録語彙数は決して多くは無いが、用例と説明が丁寧で、読む単語集といった風体である。付録CDの音声も良い。各例文が、始めは通常のスピードで、次に日本語訳が入り、最後にもう一回、今度はゆっくりと音節毎の発音がわかるように音読される。入門者の独習に適した教材だと思う。この続編、『仏検 準1級・2級必須単語集』もお勧めだ。他にも良書は有るが、きりがないので割愛する。英語を除いて語学書界の最大勢力であろうフランス語はさすがに語学書が多く、書店で色々と目移りするが全てをチェックすることは僕にはできない。まだまだ「お宝」が眠っているであろう。しかし、一年もするとフランス語は飽きてしまった。さて、

横の書架に目を移すと、これも一大勢力であるドイツ語の語学書が並んでいた。これで僕はドイツ語をやることにした。よい語学書を求めて。因みに僕が新しい言語を始めるパターンは、先ず中公新書や講談社新書の、その言語の入門書、無ければ白水社の言葉のしくみシリーズを読む。そこにも無ければ白水社のニューエクスプレスシリーズ。ここでは『はじめてのドイツ語 (講談社現代新書)』がとても役に立った。次に適当な文法書にサッと目を通して、単語集や簡単な読み物へ行く。もちろん探索は怠らない。当初のワクワク感が無くなってくれば、それ以上は進まない。或いは一旦離れる。言語の習熟が最大の目的ではないのだから。ただドイツ語は例外的に(この時点ではまだ例外とは言えないが)2年くらい続けたと思う。数ある語学書の中で最も気に入ったのが上の『中級ドイツ語のしくみ』。目から鱗の落ちる、楽しい読書であった。

次にすることはもう分っている。別の言語に移れば、まだ知らない良書が山ほど見つかるだろう。スペイン語はフランス語の経験が有るので馴染みやすかった。ただ、動詞の活用がちょっとややこしく、その点のみをフォーカスした『極める! スペイン語の動詞ドリル』『極める! スペイン語の接続法ドリル』が有り難い。スペイン語は日本の語学書界では5,6番手でしかないが、面白い語学書が結構出ている。『スペイン語で詠う小倉百人一首』『スペイン語で奏でる方丈記』等は他に無い。因みに、スペイン語と前後する一大勢力(もちろん語学書界で)のイタリア語にもついでに手を出そうとしたが、これはスペイン語とあまりにも混じるので諦めた。近すぎる言語を一方が固まる前にやるのは無理がありそうだ。因みにこの辺から、運動中に読むには適しない語学書が出てきており、 運動前にジムのラウンジで開いたりしている。

続いて中国語。英語を除いた語学書界の二大巨頭の一角。もはや最大勢力かもしれないが、街中で耳にする中国語は心地よいとは言えないし、四声と発音が面倒そうなので手を出しかねていた。発声に関しては『紹文周の中国語発音完全マスター』が定評通り。文法は『Why?にこたえるはじめての中国語の文法書』が非常に分かりやすいと思う。ただ中国語に関しては文法を知らなくても、単語集の例文を見て構造を十分理解できるので、文法書は必要ないかもしれないと思う。その方が、例文を見て、ああ、こういう言い方をするのか、という発見的な面白さが有る。上述の文法書、良いものであることは分かるのだが、少し読んで止めた。

中国語で今のところ最大の当たりは『キクタン』だった。キクタンシリーズは言語によって当たり外れがあるのだが、中国語のものは楽しい。読み手の声が可愛らしく(中華風)、何度も聴いてしまう。この辺りから僕は言語の音声的側面の快感、つまり聞いて心地よいか、発声して心地よいか、を重視するようになった。

語学書界大勢力の中の末席、ロシア語。鉱脈はだいぶ細い。が、入り口でいきなり当たった。上の『はじめてのロシア語 (講談社現代新書)』は現在のところ絶版で、僕は中古品で2冊買った。読書兼布教用と保存用。布教用はその用途の通り、読書会メンバーに差し上げてしまった。ロシア語の魅力と構造が一望できる、とてもよくできた入門書の入門書だと思う。

ただ、ロシア語はここから激坂が待っていた。先ずキリル文字。なまじラテン文字と似ているものがあるだけに、文字と音を素直に繋げることができない。始めのうちは、一息置き、じっと単語を見つめ、一文字ずつコレはアレ、コレはソレと音を当てはめてようやっと単語が読めた。次に語彙。これまで経験してきたものと共有点がほとんど無い(言語学者なら分かるのだろうが、僕には分からない)。そして格変化がややこしい。文字に関しては、始めて間もなく仕事が忙しくなったり他の言語に浮気したりで半年ほど中断したところ、すんなりと読めるようになっていた。残りは未だ坂の入り口といったところ。因みにロシア語が枷になって他のスラブ系言語に手を出せずにいる。

ロシア語は聞いても発声しても気持ちの良い言語だと思う。僕の一押し。ロシア語キクタンの音声は個人的に中国語よりやや劣るが、それでも素晴らしい。ある程度慣れたら『日常ロシア語会話ネイティブ表現』がいい。

キリが無いので一旦置く。語学書界の大勢力は他に朝鮮語とポルトガル語が有るのだが、まだ未調査(注意していただきたいのだが、語学書勢力の大小は僕が勝手に、書店書架での優占具合から分けている分類に過ぎない。畝を作るのが好きなのだ)。ラテン語はちょっと別枠で、絶版書や海外文献(ラテン語に手を出すような人なら外国語文献が視野に入るであろうから)まで入れれば一大勢力になる。未だ正式に手を出していないが、以前読んだ『ラテン語の世界―ローマが残した無限の遺産 (中公新書)』は面白かった。ラテン語が死語ではないことが分かる。『ハリウス・ポッテル』 (Harrius Potter)も出版されている。(ちなみに、古典ギリシャ語版もある。)

ここまでで察して頂いただろうと思う。僕の趣味は語学書の読書と良い語学書を探すことであり、それを総括して「ゴガク」と呼んでいる。

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