コーンスネークの本

コーンスネークのモルフ本

僕の感じたこと。人には踏み込むと容易には抜け出せない危険な領域があり、爬虫類飼育もその一つ。それも1匹1匹が場所と手間を取るカメやオオトカゲ類よりはヤモリやヘビ、そしてヘビの中でも比較的大きいボア・パイソンよりはナミヘビ、と危険度が上がっていく(僕的感想)。オオトカゲを飼育した事はないけどな。中でも様々な品種が作り出されているボールパイソン、コーンスネーク辺りは初心者向きと謳っていることもあって誤って踏み込み易く、危険度も高い領域である。大体ヘビの仲間は飼育が楽で、体表も鮮やかな種が多く、コレクター心を刺激するのだ。

特にボールパイソンは近年人気が高まっているそうで、専門店も在る程。煌びやかなモルフ(色、柄)の個体が高値(パッと目を引くようなヤツは大体10万円はする)で飛ぶように?売れているらしい。確かに顔も動作も性格もこれ以上無い?くらいに可愛らしいと思うのだが、もしこれを読んでいる人で、SNSやyoutube動画などから触発されて、これからボールパイソンの飼育を始めようと考えている人がいるなら、手を出す前にちょっと考えてみて欲しい。ボア・パイソンの仲間は待ち伏せ型の捕食者なので基本的に動かない。普段はボテッと寝転がっていて、月に一度か二度餌を食べてはフンを出す。代謝が低いので寿命はナミヘビを優に超え、事故が無ければ2・30年は生きる。この先30年間に渡ってウンコ製造棒(とてもかわいらしい)を部屋の片隅に転がして置く覚悟は有るだろうかと。カーペットパイソンも同様に派手な色柄から人気上昇中だそうで、ややイカつい顔と性格、サイズから初っ端にソッチ方面へ行く人はあまり居ないだろうと思われるが、流行に背を押されて踏み込みそうな人は思い出して欲しい。アレは飛び掛かってくる危険性のある、ウンコ製造棒(ちょっとカッコいい)だと。

元々カリフォルニアキングスネーク(アメリカ大陸に分布するナミヘビの一種)が好きなこともあって、ウンコの事を思いながらパイソンの危険地帯に踏み込まないようにしていたら、北米ラットスネークという別の危険地帯に入り込んでいた。ブラックラットやイエローラットなど、もう溺愛である。こいつら単独ならそこまで危険ではないと思うのだが、いや十分危険なのだが、そのすぐ脇にはコーンスネーク地帯が広がっている。別名レッドラットスネーク、和名はアカダイショウ。ここは本当に危ないので、その辺りには近寄らない方が幸せかもしれない(たてまえ)。これがもう可愛いいのである。先ずは一匹、飼ってみよう。いや、わりと真面目に。可愛くない性格の個体も稀に居るらしいけど、そんな個体に当たった時は、もう一匹どうぞ。

『コーンスネーク完全飼育』という本を愛読していた(写真を眺めるだけ)が、最近はもっと色んな美しい個体を見たいと思うようになり、twitterやinstagramのタグから画像を漁っていた。そうして何処で読んだか忘れたけど検索網に引っ掛かって来たのが表題のコーンスネーク本。なんでもこの界隈では割と有名な本らしく、ビックリするくらい綺麗な個体の写真が沢山乗せられている。2012年の出版と少し情報が古いので、今では他種(グレーラットスネーク?)由来とされる遺伝子が関わるモルフ(「ウルトラ」)も他に5種類?あるハイポメラ二スティック(黒色が薄まる形質、遺伝子)と同列に解説される。コーンスネークの周辺は種の分類自体が曖昧な様子で、こうした他種由来の遺伝子は調べればまだまだ入り込んでいるのではないだろうか。シランけど。因みにこの本はドイツ語で書かれているが、モルフ名は英語表記なので写真を眺める分には心配いらない。ドイツ語自体も簡単な言葉で書かれており、というか用語の範囲が狭く、霧消しつつある僕のドイツ語力でも大半は半分くらいは理解できる。

本書で特に気に入っている写真の一つが「マイアミ」(正式には「マイアミフェイズ」と言うらしい)というモルフのやつ。このモルフは、マイアミ地方の個体に見つかる、一般的なワイルド個体と比べてコレコレの傾向が比較的強いかも、という「程度」で表現される特徴が十分強調されるように、選別交配を重ねて選出されるローカリティ(地域個体群)モルフである。量的遺伝(今も使われるか知らないが)か、エピジェネティクスが関わるのだろうか。しらんけど。その点でアメラ二スティック(いわゆるアルビノ)等の単独遺伝子がオンオフ的に作用するモルフとは異なる。この手のモルフは凄い奴、つまりその特徴がムキムキに?表われた個体を産出するのが大変だと聞く。そしてその写真のやつは物凄い(僕的感想)のだ。「マイアミ」では地肌(個体によって茶色、黄色、オレンジ、赤っぽい色)から暖色が抜け、できるだけグレーに近い色合いが良いとされる。斑紋の濃いワインレッドとの対比が特徴的な美しさ(僕的感想)となる。一般的にコーンスネークは成長するに従って地肌にも赤みが出てくる。その写真の個体はまだ若いので真価は分からないが、それにしても補色効果で薄青く見える地肌は凄い()。

「マイアミ」は、この趣味に踏み込んだ当初から良い奴が居れば買おうと決めていたモルフの一つで、つい先月の中ごろにその良い個体をとうとう見つけた。とは言っても、ベビーの段階で良いかどうか僕には今一つ分からないので、超マニアックな店主の見立てである。今年になって通いやすい場所に移転してきたその店は店主の趣味からナミヘビに力を入れている様子。知識もハンパなく、僕にはとても危険な店である。その「マイアミ」は、ハンドリングした時に全くバタつかず、柔らかく指に巻き付き大人しく落ち着いていて、僕は魂までキュッと絞められてしまった。僕たち哺乳類の本能が訴えるとおり、ヘビは危ないのだ。

野生動物では考えられないこの類の大人しさ、人馴れ感は累代の家畜化の影響だろうと思われる。なにせコーンスネークの家畜化の歴史は爬虫類界でもトップクラスである。そう意図する・しないに関わらず、人の管理下にある動物では取り扱い易い性質を持つ個体が繁殖個体として選ばれる傾向にあり、別の性質(例えば犬の頭の良さ、など)もそれに乗っかって強まるそうな。そうして、通常の野生状態では警戒心の塊のようなギンギツネ(だったかな?)も、人の手に怯まない、という性質だけを基準に選別され数代を重ねた結果、人に尻尾を振る程に穏やかで危機感の無い個体が生まれるらしい。これは『Humankind 希望の歴史』で紹介される実験の一つ。詳細はうろ覚えだけど、おすすめ。爬虫類も概ね同様の傾向にある。

なお、表紙の個体は、まだ若いテッセラ(柄のモルフ)。オケーティー(ローカリティモルフ、黒い縁取りが太くなる)も入っているのかな。何れにせよ、グッと来た。 ・・・ 来ない?