古典ギリシア語文典

まだ読んでいない

どこで読んだか忘れてしまったが、ラテン語を学習する場合は古典ギリシャ語もセットでやることが推奨されていて、恐々と再開することにした。以前手を出した時はなかなか覚えられず、ここまでやれば1・2年程度離れても直ぐに取り戻せる、と僕が勝手に感じているポイントにも到達できていなくて、少し怖じ気がある。それならば最高の教科書で意気込もうとして購入したのが表題書であった。本書の値段はなかなかの物で、もうやるしかないという訳だ。

問題はサイズ。普段僕が本やスマホを入れて持ち歩いている手提げにその威圧的なボリュームが上手く収まらない。ちょうど良い具合の容れ物は無いかと、本書を片手に書店の階下にあるアウトドア用品店をウロウロしていて、何かの拍子に本が手から滑り落ちてしまった。そこそこの音を立てて本は角からドンと床に着地し、そのインパクトに表紙の厚紙が少し潰れ、地(中身の方)にも衝撃からくる折れ目が端の方に少しだけ入った。読む分に支障は全く無いのだが、僕は本は(本だけは)できる限り丁寧に、綺麗に扱いたい性分である。その落下音と共に、僕のやる気と魂も少しだけ、数%くらいはフワッと辺りに霧散した気がする。

さて内容の方であるが、初っ端の発音やアクセントから書いてある事が難しい。本書は僕が今現在愛読している『古典ラテン文典』の姉妹書ということもあって、高度な内容が詰まっているようである。『ラテン文典』の方はまだ初級編の形態論を読んだに過ぎないけれど、豊富に載せられる例文は最初の数章こそ単純な作文だったものがいつの間にか「本物」からの抜粋になり、そこにはまだ説明されていない文法事項も当然のように含まれるため、この本を一冊目として勉強するのは根気がいるだろうと思われる。ただし、一通り浚った後なら本当にお勧めできる。表題書もどうやら同様のようで、それ自体もなかなかのボリュームの『ラテン文典』と両方を持ち歩くのは余りに大変という言い訳もあって、当面は以前に読んでいた『しっかり学ぶ初級古典ギリシャ語』で先ず慣れることにした。こちらはアルファベットの解説から始まっていて、表題書の後だとホッと親しみが湧く。これも表題書の効果。

オーディブルの方で今聴いているのは “Hurricane Lizards and Plastic Squid: The Fraught and Fascinating Biology of Climate Change” 。気候変動の影響を考慮した生態学の研究紹介で、例えばジャックフルーツ(?)と絶滅したナマケモノの共依存関係などが紹介されていて凄く面白い。間違いなく人間活動によって起こされた(起きつつある)、現在僕たちが直面している急激な気候変動に或る種が適応できるかどうかは、その種がジェネラリスト(色んな物を食べる)かスペシャリストか、あるいは特定の少数種と強い共生関係にあるかどうか、などが直接的に影響することは常識的に思い浮かぶ。

それだけではなく、変動前であれば互いに生息地が隔離されていたために競争関係になかった別種と接触する影響もある。この観点は僕は何故か頭から抜け落ちていた。例として取り上げられていたのがカットスロートトラウト(?)とレインボートラウト(ニジマス?)。少しの温暖化は本来であれば前者に益するが、より強い競合者である後者と混棲することになり数を減らした。恐らくこれは気候変動のみが原因ではなくて、スポーツフィッシングのための放流や生息地の改変など、人間活動広範が関わる事例だろうと思われる。

忘れがちな点がもう一つ。気候変動は種の形態も変える。例として上げられたトカゲでは、環境が恒常的な強風に晒されるようになった為に、より強風に適応できる形態になった。より適切に言うと、そういう形質を備えた個体が集団内に増えた。産業革命以降のイギリスで或る蛾の色が白優勢から黒優勢に変わった事例は中学の理科の教科書にも出ているので、日本人の大半が知っている(筈の)事である。この話を聴くまで僕はすっかり忘れていたんだけれども。